皆様 ごきげんよう

 

 

北朝鮮 拉致者ご家族への 気持ちを綴りました。

 

朝鮮民主主義人民共和国の赤十字社に精米 120t寄付(2005年)


左端より、北朝鮮赤十字社代表


李虎林事務総務長、


中央インドネシア大使バンバン大使閣下


右端国会タイムズ創設者 五味武会長

 

 

 

 

地球上では、強者が弱者を侵略、略奪し、領土を奪い支配する――戦争の絶えない時代が続いています。悲しい人間の性です。人類が存在する限り、私たちは真の調和を目指さなければなりません。しかし、その理想とは裏腹に、現実には調和を乱す行動が繰り返されているのです。

 

最近、北朝鮮による拉致被害者の家族の方々がワシントンを訪れ、トランプ大統領に面会し、拉致問題の解決に向けた支援を懇願されたとの報道に接し、胸を締めつけられる思いがいたしました。彼らの真摯な願いとは裏腹に、その行動が日本で政治的に利用されている現状を、たいへん気の毒に感じます。

日本政府はこれまでも繰り返し、拉致被害者家族にアメリカの大統領や駐日大使との面会の場を設けてきました。しかしながら、それは果たして実質的な解決に繋がってきたのでしょうか。むしろ、感情に訴えるパフォーマンスに終始し、北朝鮮側の態度や方針を変えるには至っておらず、金正恩氏の心を動かすこともできていません。日本は、北朝鮮から見向きもされない国となっているのです。

アメリカ大統領のトランプ氏と会うよりも、現実的に拉致問題の解決に近づく可能性を模索するのであれば、プーチン大統領との接触を図るほうが得策ではないかとも考えられます。しかし残念ながら 日本はその立場にありません。

 

思い返せば、解決の糸口はかつて存在しました。2002年9月、小泉純一郎首相が平壌を訪問し、「日朝平壌宣言」を交わしました。北朝鮮側も韓国との統一を視野に入れ、日本との関係改善に前向きな姿勢を示していました。そしてその翌月、北朝鮮は初めて公式の場で拉致を認め、謝罪し、5人の被害者が日本に帰国したのです。当時の日本国民は、紅涙しその帰国を歓迎しました。北朝鮮赤十字会の李氏に付き添われて帰国した5名は、日本の地を再び踏みしめました。

 

しかしその後、日本政府は李氏をまるで罪人のように扱い、ホテルに軟禁するかのような対応を取りました。そして安倍晋三氏(当時の官房副長官)は、拉致被害者を北朝鮮へ一時帰国させるという約束を破棄し、5名を北朝鮮に戻さないという判断を下しました。そして両国の首脳が調印した「日朝平壌宣言」も日本が勝手に一方的に反故にしたのです。この決断のうらにアメリカの打診があったことは否めないとおもいますが、信頼関係の破綻を招いた大きな分岐点となったのです。

 

日本政府は「日朝平壌宣言」に基づき、戦争賠償問題の解決を目指していました。多くのアジア諸国に戦後賠償を行った日本が、北朝鮮に対しても同様の姿勢を取ることで、両国関係の正常化を進めるはずだったのです。その補償は、必ずしも現金である必要はなく、学校や病院、インフラ整備といったかたちで、北朝鮮国民の生活を支えることができたでしょう。それは同時に、日本の建設業界にとっても大きな恩恵となるはずでした。

さらに、北朝鮮国内の飢餓問題に対して、日本が肥料や食料を提供することで人道的な支援を行い、政治的な安定にも寄与できたはずです。もしこの道を選んでいれば、補償金が軍事や核開発に流用されるリスクも抑えられた可能性があります。又、 北朝鮮が急速に極度の共産化することもなかったことでしょう。

しかしながら、現実にはそうはなりませんでした。世界の二大軍事大国であるアメリカとロシアは、軍需産業を維持するために戦争を必要としています。政変や内戦を助長し、平穏な国にも混乱をもたらす状況が繰り返される限り、真の平和は訪れません。武器を作り、買い、使う国々が存在する以上、地球の調和は叶わぬ夢なのかもしれません。

 

ウクライナに対するロシアの侵攻も、虚偽のプロパガンダを背景にしたプーチン氏の戦略であり、アメリカにとっては北朝鮮を「敵」として扱うことが国益にかなう構図が存在しています。そして、日本はその構図に組み込まれてしまっているのです。歴史的背景と地政学的立場を考えれば、アメリカと歩調を合わせることが得策であることは否めませんが、拉致被害者ご家族の心を政治利用するような振る舞いは看過できません。

金正日政権時代、日本は日朝平壌宣言を順守し、信頼関係を築いていれば、民間レベルでの交流が進み、経済や文化を通じて北朝鮮社会の実態が見えてきたはずです。そうなれば、生存していた拉致被害者の帰国も、可能性としては残されていたことでしょう。しかし現在の金正恩政権は、日本を交渉相手としてすら見なしておらず、問題解決への糸口すらつかめない状況です。

 

横田めぐみさんのご両親が、モンゴルでお孫さんと面会された際、再度めぐみさんはすでに亡くなられているという話を聞かされています。それにもかかわらず、日本政府は「生存の可能性がある」と希望を持たせ、家族会の活動を続けさせています。北朝鮮から届けられた遺骨についても、水害によって他人の骨と混じっていたことからDNA鑑定が困難であるとされましたが、それを政府は「偽物」と断定しました。

拉致問題は、日本国民すべてにとっての痛みであり、心の課題です。横田ご夫妻の努力が支持される限り、「生きている」という希望を掲げ続ける政治的構図は変わらないでしょう。

しかし、いまこそ求められているのは、感情的なパフォーマンスではなく、現実的な外交と真摯な対話です。過去の約束に立ち返り、調和を目指す姿勢を取り戻すことでしか、未来は開かれないと信じています。