午後、新しい隣人が上階から移動してきて、さっそく看護師に質問する声が聞こえた。

「なぜここに移動したんだ。もう俺の命、危ないのか」

「あなたは差額ベッドを希望していたので、空きが出たから移動したんですよ」

 納得したらしく、静かになった。

 夕暮れ時、車いすに乗せられた私は、内視鏡室に移動した。

 私は、看護師と一言二言話をし、全身麻酔をかけられると直ぐに意識を失った。

 全身麻酔も初めての経験だったが、こんなに早く効くものかと後で驚いた。

 目が覚めた時には、部屋のベッドに横たわっていた。

 部屋は静かだった。

「八時ころかな」

 トイレに行きたくなり、ナースコールのボタンを押した。

「水なんか一滴も飲んでいないし、食事もまだとれない。ただ点滴だけでしょっちゅう尿意を催すものなのか。疲れるな」

 それからも頻繁にもよおす。

 看護師に迷惑をかけたくないので、私は尿瓶を借りることにした。

「こんな形をしているのか。うまくできるかな」

 私は恐る恐る瓶を持って、排尿した。

 こぼさないようにするのは、結構難しい。

 朝三時ごろ、隣からの看護師の声で目が覚めた。

「どうして簡易トイレでしないんですか。床がびしょびしょよ」

 隣人の声は聞こえない。

 私は、看護師の仕事の大変さを再認識した。