それから一睡もせずに、朝を迎えると、

「沢藤さん。部屋を代わってもらえませんか。ただ廊下側になりますけど」

 看護師長が声をかけてきた。

 どのような理由かはわからないが、隣の事件で寝不足の私にとっては、喜ばしいことだった。

「すぐにですか」

「はい」

「場所が変わったことを妻が見舞いに来た時に伝えてもらえますか」

 私はまだスマホを持っていなかった。妻に連絡するすべは、外来棟の公衆電話のみだった。

 私は、すぐに移動の準備にとりかかろうとしたその時、対面のカーテンが開いた。  

 そちらに目を向けると、左の机の上に心臓の心拍を計測している?機械画面が置いてあり、ベッドを起こしている患者が呆然と私の方を見ていた。

 かなり重症のようだ。時々、ヘルパーが、彼の身体と足を洗いにやってくるのは、体の自由が利かないからなのかと納得しながら、こちらを向いている彼に、私は頭を下げた。しかし、なんの応答もなかった。私は、言いようのない虚しさにおそわれた。

 移動した部屋は、前の部屋とは大違いの静けさだった。

 午後三時。

 昨日の切除具合を確認するために、内視鏡室へと向かった。

 今回の検査は、部分麻酔で十分もかからずに終わった。

「全部切除されているようだ」

 T医師が看護師に話しかけている声が、私の耳に入った。

「そうですね」看護師が答えた。

 部屋に戻ると、妻が私を待っていた。

「どうでした」

 昨日の除去はうまくいったと、医師の言葉を伝えた。

 

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