私の恩師、
ポーランドの世界的ヴァイオリニストWanda Wilkomirska。
元ポーランド大統領夫人であり、各国での演奏活動と共に、
後進指導にも力を注いで下さった素晴らしい音楽家です。

Wandaとの出逢いは
私がシドニー音大にいた頃でした。

「あの世界的ヴァイオリニストのWandaが
音大の教授としてシドニーにいる..!」

私は、Wandaに教わりたくて、
大学のWandaの部屋へ自ら行き
ドアをノックし、
「あなたの生徒にしてください!」と申し出ました。
するとWandaは、
「Ohh, I know you. (あなたのことは知っているわ)」
と優しく受け入れてくださり、すぐにokしてくださいました。

「ええ..いいんでしょうか..?」( ゚д゚) 

嬉しさのあまり信じられなかった私でしたが、
その数日後
音大で行われた私のリサイタルに、
どこでこのリサイタルを知って下さったのか、
わざわざ聴きに来て下さいました。
そして演奏後に、
「That was absolutely wonderful!
I'm so proud of you!」
とあたたかい言葉をかけて下さいました。

「I'm so proud of you」"私の誇り"。
その言葉を聞いて、やっと、
「あぁ本当に先生の生徒になれるんだ。。」と実感が湧き、
絶対に先生に恥じない生徒になろう
と心に誓いました。


音大を首席で卒業できたのも、
Wanda先生のお陰です。
恥じない生徒になりたかった、その一心でした。
私などができる恩返しはそれぐらいしか
思いつきませんでした。



とてもフレンドリーで愛らしく、
音楽を心から愛している
生粋の芸術家でした。

先生は、
私のように小柄にもかかわらず、
手が大きく、
指先が幅広で腕が長く、
私の短くしている爪よりも
もっと短く、毎日丁寧に爪をギリギリまで切られていました。
まさにヴァイオリンを弾く為に
生まれてきたような方でした。


ヴァイオリンはギャルネリ(Guarneri 1734年)を使われていて、
彼女の幅広な指先が織りなすビブラートと
ギャルネリの深く甘い音色がよくマッチし、
毎回レッスンではその音色に鳥肌が立っていました。
私の色々な種類のビブラートは彼女から大きな影響を受けています。


少し早めにレッスン室に着くと、
決まってWanda先生は一人で練習していました。
1日でも練習しないと、なまっちゃうからね、と。



Wanda先生。
本当にありがとうございました。
私はあなたに出逢えて幸せでした。
数え切れない事を教えて頂きました。

あと一回でいいから、Wandaに逢いたかった。。

天国でも大好きな音楽を
たくさん奏でてください。



石川綾子

(個人的なブログで、すみません。。
恩師の訃報が入り、
この気持ちを大切なブログに残したく、
そして応援して下さっている方々と、
今の私は先生方無しではいなかった事を
共有したくて、書かせて頂きました。)