私の音大の頃のヴァイオリンの先生は
Wanda先生でした。


ポーランドの世界的ヴァイオリニストで、
私も幼い頃から彼女のレコード/CDを
たくさん聴いて育ちました。
その才能を大統領に見初められ、
当時のポーランド大統領夫人になられた方です。

・・にもかかわらず、
とても心温かいおばあちゃん先生で
人間味に溢れ、いつも
「Ayako, you are so talented!!
ohh I'm so proud of you.
(綾子、あなたはすごく才能がある!
あなたは私の誇りよ。)」
と言ってくださり
愛情を注いでくださいました。



そんなWanda先生が当時
言っていた言葉を、
最近よく思い出します。


「Ayako,ヴァイオリンの魅力のひとつはね、
Open Strings (開放弦)があることなの。
素直な音が出せる事なの。」


4弦あるヴァイオリンには
指で押さえず鳴る音が4音(G,D,A,E)あり
(指を解放しても鳴る弦=開放弦)
学生の頃はずっと
開放弦をなるべく使わず指で
押さえてこれらの音を出すのが良い(難しい)
とされていました。

指で押さえるほうが
vibratoもかけられるし、
音程もつけられる。音色も
他の指で押さえてる音と同じに出来るからです。

ですのでWanda先生のこの言葉を聞いた時、
今まで小さい頃から
教わってきた事と真逆の事で、
理解ができませんでした。



今やっと分かった、開放弦の魅力。
他の楽器にはない魅力。


たった4つしかない素直な音。
なんて貴重なんだろう。。
たまに聞こえる開放弦の音で
心の緊張の糸がふっと解放されるような
そんな素直な音。


そんな魅力を私に教えようとしてくれた
彼女は、やっぱり先生ではなく
アーティストでした。
ヴァイオリンという楽器を愛している
アーティストでした。


ヴァイオリンの魅力を
どんどん発見し、楽しむ。
他の誰もが、たとえそれが
常識と違うと言ったとしても、
自分がそれが魅力だと思っていて楽しめばいい。

そんなアーティストに私もなりたいです。



石川綾子