第2話【死 (ふあん)】


都会の蒸し暑い夏を終え、秋に差し掛かる頃
一人のクラスメートがいなくなった・・・


その日、午前中の授業を終えた俺は、バイトに行くために
帰る途中だった

別校舎の前で人だかりが見えた
何気なく近づくと、みな上を見ている
つられるように見上げると、屋上のフェンスを乗り越えたのか
一人の男が立っていた


・・・どこかで見た顔・・・


同じクラスの秋山だった・・・

あまり話したことはないが、結構女子に人気のあった奴だ

(なにやってんだ?・・・)

だんだんと人だかりが増え、ざわつき始める
教授たちも集まり始めなにやらあいつに向かって大声で話している
その声に首を振り続ける秋山・・・


遠くからサイレンが聞こえてくる
その音の方向に目をやり、さみしそうに笑った
・・・俺にはそう見えた・・・



フェンスを握っていた手を離し


「僕はここにいるんだ!!」


そう叫ぶと、秋山の体は前のめりになった・・・

女子の悲鳴が響き渡る
落ちていく秋山の体は、なぜかスローモーションになっていた

ドン! 

一瞬の静寂の後、つんざくような悲鳴があたりを走った


その日、学校の午後の授業は中止になった・・・


バイトを終え、アパートに戻りTVをつける
くたくたの体だったが、どうしても昼間の光景が離れない
いくつかチャンネルを変えると
そのことが流れていた・・・

秋山は、俺の隣の県の出身だった
そんな風には見えなかったが、あいつも田舎から出てきたんだ・・・
顔は映らなかったが、何人かの友人のインタビューが流れていた

一見華やかに見えた秋山だったが
後から聞いた話では、意外と友人は少なかったらしい・・・

次の日、教室のあいつがいつも座っていた席に
一輪の花が飾られていた

誰が飾ったのかもわからないが、ポツンと飾られた花


あいつの最後の言葉・・・


「僕はここにいるんだ!!」・・・


その言葉が、妙に耳の奥に残っていた

あいつはどうして死んだんだろう?
どうしてあんな言葉を言ったんだろう?

言いようのない不安が、俺の心に広がった

何が不安なのかわからない・・・

でも、俺の中に広がった不安は消え去ることはなかった

当時

その不安が現実のものになるとは
思ってもいなかった・・・



銀杏の葉が黄色く染まり始めていた