side-3・ パンドラ


私は、その一対の人間に(アダム)と(リリス)という名を授けた

しばらくは平穏な世界だった

だがやがて、(リリス)は、なぜか自我に目覚め(アダム)と対等な立場を

求め始める


二人の仲は険悪な状態に陥り、(リリス)はその世界から逃げ出した

天界から観る私の目からも(アダム)の落胆振りは気の毒になるほど・・・

私は見るに見かね新たな女性を与えた

名を(エヴァ)と名づけた


私はその世界の中央に「生命樹(ユグドラシル)」を植えていた

世界の生命の根源を司る樹として・・・



そしてその枝分かれした1本に、善悪の知恵を授ける実を宿らせた

ある日、私がその世界から目を離した隙に

(エヴァ)の元へ何者かが忍び寄り耳打ちをした

(エヴァ)は、私にこう話した・・・

〔あの枝の先端になる実は、智恵の実であり善悪を見分ける力が授かる

エヴァ、あなたは神と同等になれるのです〕

その者は、そう話したという


(エヴァ)は、その話を(アダム)にも伝え、二人でその実を食べた・・・

二人は自らの欲望に身を委ねたのだ

いつの間にか、「人間」に(欲望)という感情が生まれていたことに

私は気づかなかった・・・

ならば、全ての(欲望)を兼ね備えた「人間」を作ろう・・・

そう私は考えたのだ



私は、数々の神に頼んだ


鍛冶の神〈ヘパイストス〉には、土を水でこねそれに声と体力を注がせた


美と愛の女神〈アフロディテ〉には、

自らを美しく飾る技術とあらゆる者を魅了させる美しさを


医術と音楽の神〈アフロン〉には、

音楽の才能と治療の才能を・・・・・


戦いと知恵の女神〈アテナ〉には、機織の技術を・・・

だが私は、またしてもそこで致命的なミスを犯したのだ

私には、それぞれの神々と連絡を取るために伝令役が居た・・・

名を〈ヘルメス〉という

〈ヘルメス〉は、徐々に形作られていく人間にどうしても己の心を

植えつけたく・・・




『好奇心』を注いだ・・・


そうして創られた人間に、私は

「神々から全てを贈られた者」を意味する、『パンドラ』という名を授けた

〈パンドラ〉を地上に解き放つ際、私は彼女にある(壷)を与えた

そして


「よいか、パンドラ。この壷の栓を決して抜いてはならない

抜いたが最後、地上には抑えきれない欲望と災いが解き放たれる

よいか・・・決して抜いてはならぬ」





と、言い含めた