Side-10
朝もやの中、波間に漂う2隻のボート・・・
予定では、もう間もなく乗り込む船が到着するはず
いやに静かな海だった・・・
僕は、ボートの先端で光るビーコンの点滅を見つめていた
当初、僕たちの乗った飛龍は、紅海を上りスエズ湾とアカバ湾の分岐点にある
シャルムアッシャイフ沖まで行き、僕たちはそこからカイロへ向かうチームと
アンマンまで向うチームに分かれるはずだった
しかし、状況は変わった・・・
チームAはオマーンの港町サラーラで上陸、そのまま陸路にてマスカットへ
空路を確保し、目的地はスイスのベルン
チームBはインドのムンバイ(昔のボンベイ)で上陸、そこで空路を確保し、
空路を確保し、目的地はスウェーデンのストックホルム
チームAは、リーダーの伊達を含む6名
チームBは、僕を含む4名に分かれた
団体行動は目に付きやすいので、上陸後2人1組に分かれそれぞれの判断で目的地まで
向うことになる
ミッションは各国の動向調査・・・とのことだった
『なぁ、松下。もう核は堕ちてるよな』
陸自から来た田中だった
「まぁな、時間的に見てももう堕ちてるだろうな」
『俺たち放射能の真っ只中へ行くのか・・・』
「そう言うな、やる気が失せちまうよ」
『しかし・・・』
[田中、今はミッションのことだけ考えろ。ここまで来てるんだ
今更帰るわけにもいかんだろ]
公安から来た村上だった・・・
[松下、空路は確保できると思うか?]
「さぁ、なんとも・・・着いてみないとわからんな・・・
なにせ内戦が終わっているかさえも情報がない・・・うまく空路が確保できたとして
ストックホルムまで行けるかどうか・・・」
〈上陸する前からビビッててどうすんだよ・・・まったく・・・〉
警察庁から来た斉藤が、笑いながら言う・・・
〈俺たちはスペシャリストじゃなかったのか?あらゆる状況に対応できるように
訓練されてるはずだろ?・・・どっちにしろなるようにしかならんさ〉
MSFのメンバーはあらゆる組織から選りすぐりの人員が集められている
海自・陸自・空自はもちろんのこと海保・公安・警察庁・警視庁・科技
外務省特務機関・内閣調査室特殊戦略科など
表立った組織以外にもその裏に、影の組織がそれぞれに存在している
内閣調査室特殊戦略科などは、その最たる組織・・・
正直、この僕もMSFに入るまで本当にその組織があるとは思っていなかったくらい
僕たちは、その裏の組織の中から選ばれている
あらゆる武器への精通はもとより、ジェット・ヘリなど各種の乗り物の運転操作
爆弾処理から化学物質の精製などもこなす
ま、昔の映画だけど「007」でジェームズ・ボンドっていたでしょ
そんな感じ(笑)
[来たぞ・・・]
村上の声に、僕たちは顔を向けた
7月4日 AM8:50
ボートを沈め、僕たちは船に乗り込んだ
反対側の船に伊達さんたちが上がる
皆、互いの顔を脳裏に刻み込むように見ている
もう二度と会えないかもしれない仲間たち・・・
すべるように動き出す船
僕は、敬礼をして彼らを見送った
彼らもまた敬礼をしていた・・・
もやの中船の姿は消えた・・・