Side-9

『本来の開発目的は、荒廃した土地を遺伝子変化によって変異させ

植林事業に用いること。それと破壊されたオゾン層を復活されること・・・

その為に、耐熱性・対抗性その他、あらゆる変化に対応できる性質を持つことが

必要だった

研究所内での実験は、数々の試行錯誤によりようやく成功した

あとは実際に使用するだけ・・・そこまでたどり着いていたんだ

カオリ・・・君は覚えているかい?

MITの仲間で、遺伝子工学の博士号を最短で受賞した男・・・』

「・・・彼?・・・彼なの?」

『そう。デビッド・M・シュトラウス・・・彼がこの細菌の開発者だ』

「デビッドが・・・まさか、CIAの裏切り者って・・・」

『勘がいいね、カオリ。ヨハン・C・グローゼンバーグ・・・情報物理学科の主席

奴は、卒業後ベンチャー事業を起こしIT界での風雲児となった

その能力の高さは、時の政府内でも話題になっていたんだ

そして、彼はCIAに入った・・・期待以上に彼の能力は高く

瞬く間にCIA長官の座まで駆け上がった

彼が学生の頃書いた論文の題名を覚えているかい?』

「確か・・・【イデオロギーの崩壊による国家と地球存続への警鐘】・・・

だったかしら?」

『そう、今回の件は、彼がその論文を書いた時点からすでに始まっていたんだよ』

『カオリ・・・私は合衆国大統領になったことを後悔しているよ

私がなぜ合衆国大統領になろうと思ったか・・・私は学生の頃から思っていたことがある。〔今後世界は国境を取り払い一つになるべきだ〕・・・とね。

その為にはアメリカが正義を行わなければならない。

軍産複合体の廃絶と世界的な軍縮・・・この2つが私が思っているアメリカの正義だ

この2つが成し得なければ、これからの人類の存続はありえない

そう思いながらこれまで執務を行ってきた

だが、私の力は思っていた以上に未熟だったようだ・・・

軍産複合体の廃絶が出来ないどころか、今回の危機の発端となる細菌を開発させてしまった・・・カオリ、私は核を使うよ。この核で人類はその大多数を失うことになるだろう。今世紀最悪の指導者として語り継がれるのかもしれない・・・

だが、この核で今後人類が一つになり存続できるのであれば、私はその汚名も

辞さない。1時間後、私は核を放つ。カオリ・・・日本にはその後の復興を担ってもらいたい。無茶な頼みだと思うが、お願いしたい』

「アレックス・・・」

『MITで同じ時期に学んだ仲間として、君に最後の希望を託す。

・・・では。』

香織は受話器を手に立ちすくんでいた

アレックス・デビッド・ヨハンそして香織・・・当時のキャンパス内で

彼らを知らないものは居なかった

それぞれが[天才]と評されていた

彼らの中から将来世界を担うものが出る・・・教授たちの間ではそう噂されていた

窓の外を見つめる香織の瞳には、遠い昔の日々が蘇っていた・・・