『覚醒・・・そして対峙』
じいちゃんの指が
僕に触れた瞬間
僕の頭の中に走馬灯のように
記憶が蘇った
・・・
それとともに
対峙せねばならない相手も・・・
・・・
目覚めたとき
じいちゃんはもう、いなかった
ゆっくりと立ち上がると
近づいてくる相手に僕は目を注いだ
・・・
(隆弘・・・)
悠然とした足取りで
隆弘は僕に向かってくる・・・
「裕之・・・いや・・・
ツクヨミと呼んだ方がいいか?・・・
目覚めたのか・・・」
「あぁ・・・目覚めた・・・
隆・・ぃや・・・スサノオ・・・」
「ふ・・・そうか、目覚めたか
なぁ、ツクヨミ
なぜそこまでイザナミを忌み嫌う・・・
イザナミはお前だ
お前はイザナミだ・・・わかるだろ?」
「スサノオよ・・・確かに
俺とイザナミは元々はひとつだった
だが、イザナミは黒き心に身を任せた
外見の醜さに
己の清き心を失ったのだ!
清き水に一点の黒点が落ち
瞬く間に水を黒くした・・・
全てが濁りきる瞬間
イザナミは最後の力で
俺を黄泉の国から送り出した・・・
イザナミは・・・」
「ツクヨミ!!
貴様、さっきから聞いておれば
イザナミ・イザナミと呼び捨てにしおって!!
母を愚弄するな!!」
「・・・スサノオ・・・
お主、それほどまでに母が恋しいか・・・
お主が地上に生まれてから行った
数々の愚行・・・
全て、母恋しさから来るものなのか!?」
「そうだ・・・だが、それだけではない
あれほどまでに母を愛しんでいたイザナギの心変わり
わかるかツクヨミ・・・
そのときの母の悲しさが・・・
悔しさが・・・
そして・・・怒りが!!!
母は絶望の余り、世を呪った
生きとし生けるもの全てを呪った!!
母は優しかった・・・
その優しさゆえに
裏切られたときの絶望は
甚大なものだったのだ!!
俺は、父に『黄泉の国へ行かせて欲しい』
ことあるごとに懇願した
だが・・・
父はそれを許さなかった
なぜだか判るか・・・ツクヨミ・・・
父は・・・イザナギは・・・
アメノウズメノミコトを愛していたからだ!!
己の実の娘を・・・
父は・・・手篭めにした・・・
父は、それを母に知られたくなかったのだ
ツクヨミ!!!
俺の怒りがわかるか!!」
「スサノオ・・・
お前は勘違いをしている・・・
父が、アメノウズメノミコトを愛したのではない・・・
妹が・・・父を・・・・・・愛した・・・
お前も知っているだろう
妹の美貌は、母譲りのものだ・・・
そして・・・その優しさも・・・
その心ゆえに
妹は、母と同じように父を・・・
愛してしまったのだ・・・」
「うそだ!!!
ツクヨミ・・・貴様、妹まで愚弄するのか!!
・・・・・
もう・・いい・・・
母はこの世に蘇った
・・・
なぁ・・・ツクヨミ
もう一度みなで一緒に暮らさぬか
優しかった母が戻ったのだ
お前も、逢いたかったであろう
海は割れたのだ
ツクヨミ・・・お前の勾玉は黄泉の国の動きを
操るといっていたな・・・
なぜ、母の動きに反応しなかったのか
わかるか?・・・ツクヨミ・・・」
「・・・ま・・さか・・・
あいつも・・・」
「そうだ・・・あいつの力だ
お前の勾玉と同様の力を持つ
海神・・・」
「ウミサチヒコ・・・
なぜだ!!なぜ、サチヒコがお前達に・・・」
「それは・・・
あいつに逢ったときに、聞いてみるがよい
・・・
ツクヨミよ・・・
お前に俺達を封印することは出来ない
母の力は、お前の想像を超えておる
勾玉はもう、力を失って居るぞ・・・
俺は・・・母の元へ行く
・・・
ツクヨミ・・・
今ならまだお前を迎えてやるぞ
よく考えておけ・・・」
そう言い残すと
スサノオは疾風とともに消えた・・・