【電話】


現在、世の中には

携帯電話なるものが、はびこっている

中には、「首輪をつけられているようで嫌だ」

などと言う人も居るが

ほぼ、一人1台は持っている状況にある・・・

一昔前までは

一家に1台・・・だったのだが・・・


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆


「ただいま・・・」

暗く冷え切った家に戻る

誰もいないのに、思わず言ってしまう・・・ただいま

居間に上がり電気をつけ

仏壇に向かう

「おやじ・・・おふくろ・・・ただいま」

写真の中の二人は

いつも笑顔でいる

不思議なもので自分があまり調子が良くない時は

写真の中の二人も心なしか沈んだ顔に見える

TVをつけ、食事の支度・・・

家の中に活気が出る

・・・・

こんな生活をもう何年続けてきたか・・・

そろそろ相手を見つけないと・・・

と、思うこのごろ


ある夜、玄関の鍵を開けようとすると

家の中で電話の音が聞こえた

慌てて鍵を開け受話器を取る

「もしもし」

「・・・・・」

「もしもし・・・・どなたですか?」

「・・・修一」

「え!?・・・・・おやじ??」

「元気か」

「あ・・・あぁ・・・元気・・・だよ」

「・・・そうか」

受話器から聞こえる懐かしい声

それは、確かにおやじの声だった・・・

「なぁ修一・・・

かあさんと話してたんだが

いい加減身を固めろ・・

もう、とうさんたちのことはいいから

この家もお前一人には広すぎるだろ

処分して良いから

お前の幸せを考えろ・・・な」

「おやじ・・・ずいぶん饒舌になったな」

「まあな・・・

こっちでもいろいろ話し相手は多くてな

ましてや、この前かあさんと久々にあったから

話がはずんではずんで・・・

少しは話せるようになったろ?」

「あ・・ぁあ」


生前のおやじは無口な、そして

ちょっと頑固なおやじだった

僕達子供の前でも

そう、多くを話さない寡黙な男・・・

そのくせ、意外と照れ屋なおやじ・・・

そのおやじが・・・こうも・・・

声を聞きながら

僕の頬が緩む

ずっと、おふくろのこと待ってたんだ・・・


「わかったよ、考えておく」

「そうか・・・

お前、今好きな女性がいるんだろ

早いとこ告白しないと

逃げられるぞ」

「あのさ・・・」

「あはは・・・

じゃ、とうさんたちは逝くからな

元気でな」

「あ・・・あのさ・・・」


声は消えた

僕の手は受話器を握り締めたままだった

なぜか涙が止まらない

・・・

静かに受話器置いた


ふと、壁にかけられたカレンダーを見た

3月26日・・・

今日は、おやじが死んで

33回忌だった・・・


笑みがこぼれる自分を感じた・・・