【輪廻】


ある都市にある総合病院

数日前、そこで手術が行われた

世界初の『脳幹移植』

ただそれは、極秘裏に行われた

・・・・・


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


眼が覚めると、窓からは光がさしていた

(ここは天国か?)

ふと、そう思った・・・

「鈴木さん、目が覚めましたか?」

その声に振り返ると

そこにはにこやかな顔の看護師がいた

「えぇ・・・」

「検温しますね」

そういうと体温計を取り出し

俺に渡した

脇の下にそれを差しこみ時間が過ぎるのを待つ

妙な違和感を感じていた

(あのあと、俺はどうなったんだ・・・)

「・・・うん。平熱ですね。

あとで先生が来ますから、それまで

休んでいてくださいね。」

そういうと微笑を残し、看護師は部屋を出た

天井も壁も真っ白な部屋

部屋の中には何一つなく

俺が寝ているベッドだけ・・・

たった一つある窓から差し込む光

俺はもう一度、昨日のことを思い出そうとした

だが・・・

ぽっかりと穴が開いたように

記憶が抜けていた・・・

どうやっても思い出せない・・・

考えるだけ無駄だとわかるまでに

時間はかからなかった

(まぁいい、こうして生きていることだけは確かだ・・・)

ドアをノックする音

白衣を着た人間が入ってきた

(「先生」・・・か・・・)

口元に笑みを浮かべ

俺のベッドの脇に立った

「どうですか?ご気分は・・・」

「あ・・ぁあ、まあまぁかな」

「ふむ、頭が痛いとかなにかありますか?」

「いや・・・別に・・・」

「そうですか・・・

あ・・・あとちょっとだけ皮膚を切らせてもらいますね

大丈夫、ちくっとするだけですから。・・・君」

そういうと傍らにいた看護師からメスを受け取った

その刃先を見た俺の背中に戦慄が走った・・・

・・・いや、戦慄と言うよりは

快楽への期待・・・という方が適切なんだろう

どうしてそんな思いが走ったのか、まだわかっていなかったが・・・

皮膚を切り取られる瞬間

俺は快感の中にいた・・・


数日後

退院の日が来た

なぜか入院費などは既に支払われていた

受付を過ぎ入り口のドアへ向かう

ハーフミラーの壁に俺の姿が映った

何気なくその姿を見る・・・・・

「・・・・・え??だれだ??」

俺ではなかった・・・

見覚えのなぃ・・・・・ぃや、あった!!

記憶が甦った

俺が殺した男だ!!

なぜ??なぜ??殺した男がここにいる???

なぜ刃先に快感を感じたのか・・・

思い出した

嬉しさに口元がゆがむ・・・

なぜかわからんが、俺はあの男になった

銃で撃たれたときは死んだと思った

だが、俺は生きたんだ!!

笑をこらえるのに必死だった

玄関を出た俺は、その脚で金物屋へ向かった

ナイフを買う為に・・・・・


「先生、大丈夫でしょうか?」

「・・・ん?なにが?」

「いや・・・あの男の記憶

甦ったりしないでしょうか??」

「どうかな?何かのきっかけがあれば

甦るかも知れんな・・・」

「先生!・・・」

「まぁ、そう言うな・・・

私たちは警察の言うとおりのことをしたまでだ

なにより、極秘裏だが世界初の

脳幹移植に成功したんだよ・・・君」

「あとはどうなろうと私たちの

感知する場ではないさ」

「先生・・・・」


金物屋の入り口を入る

「あら!刑事さん。お久しぶり

今日は何?」と笑顔の女将が言う

「あぁ・・・ちょっとした捜査でね

すまんが、そこのナイフもらえるかな」

「いいですけど・・・ナイフなんかどうして?」

「まぁ・・・ちょっとね」

女将からナイフを受け取る

レジに眼を移し俯く女将

俺は首筋にそのナイフを突き立てた

・・・・きた!!・・・これだ!!

この快感!!

突っ伏した女将の首筋から流れ落ちる血

ナイフを引き抜いた瞬間

血しぶきが壁に飛び散る


俺は店を出た

(さて・・・これから楽しめるぞ・・・)