12月の下旬の空港は、乗客でごった返していた
チップを渡しタクシーを降りるジーザス
降りるのを待っているかのように別な客が飛び乗る
ジーザスはコートの襟を立てコンコースへ入った
・・・
3階まで吹き抜けの巨大な空間の中央にあるもみの木
クリスマス前のデコレーションとライトアップ・・・
200mは在ろうかと思われるコンコースの両端には
カーテンウォールの窓と、そこに映る夜景
そのガラスの配列を見たジーザスの口元が歪む
肩がぶつかるほど込み合っているコンコースを歩く
「あ・・・」声とともにジーザスにぶつかる女性
手荷物が床に散らばる
「・・・大丈夫ですか・・」と、ジーザス
「ごめんなさい・・急いでいたもので・・・」
栗毛色のショートカット・品のいい女性用のトレンチコート
仄かに香る香水・・・
その姿と匂いに、ジーザスの欲望は動いた
散らばったものを拾い集めながら「どちらまで・・・」と聞くジーザス
「あ・・・サンフランシスコまで・・」
「遠いですね・・飛行機のお時間は・・」
「・・えぇ・・まだ1時間ほどあるんですけど・・」
「そう・・もし、よろしければお茶でも・・・」
「え・・あ・はい」と、微笑む女
・・・
女が乗るはずだった便は飛び立った・・・
待合ロビーでタバコをくゆらせるジーザス・・・
「ママ・・・あれなに?」
窓の外を見ていた子供が母親に声をかけた
「え・・・どれ?」
と、子供が指差す先を見る母親・・・
その影の元を見ようと振り返る母親・・・
コンコースに母親の悲鳴が響き渡った
一斉に足を止める人々
母子の傍にいた人々は、彼女のさす指先を見た
その人々の目線を追う下階に立ち止まる人々・・・
天井から吊り下げられた女性・・・
その両腕は天井の梁に繋がれぶら下がってた
女性の後ろから照らす照明の光がガラス越しに影を作る
十字架に貼り付けられたキリストのごとく・・・・・
・・・
子供の声で立ち上がったジーザス
人ごみに紛れスタッフ通路へ出る
扉を閉じたと同時に聞こえるサイレンの音
・・・
暗闇に紛れジーザスの姿は消えた
・・・