「夢☆Story」http://ameblo.jp/ryokuryusei のりょくさんの日記にあった夢の続きです。

登場人物の設定ちょっと変わるかもしれませんけど、できるだけ忠実に夢の中の設定を生かしたいと思います。

チューリップ紫チューリップピンクチューリップオレンジチューリップ黄チューリップ赤

検査の支度が終わり、僕は「あき姉」(以下:アキと呼ぶ)の病室へ向かった。

前の検査で、アキの病名は判明していた。

でも、僕にはそれを彼女に告げる勇気はなかった・・・

《また、検査か・・・なんどやっても同じなのに・・・》

アキの病室は病棟の西の端にある

廊下を歩き、病室に近づくごとに僕の気分は落ち込んでくる

僕は医者だ・・・でも、愛する人を治すことが出来ない

その無力さが、どうしようもなく僕の心を沈ませる

《医者になんかならなければよかった・・・》

なんどそう思ったことか・・・


病室の前に立つ

深呼吸をしてノックする・・・

扉を開けると、窓の外を見つめるアキがいた

「アキ、検査なんだけどさ・・・」

振り向くアキ、その頬には西陽があたり、色白のアキの肌をピンク色に染めている

肩まで伸びた髪・・・ここに来た頃はショートだったのに・・・

水色のパジャマを着たアキはベッドの端に座り外を見ていた・・・

振り向いたアキは柔和な微笑をしていた・・・

「あ~!やっと来た。遅いじゃないのよ。ね、検査いつやるの?

早くしないと山登る前に冬になっちゃうよ!(笑)」

「・・・あ・あぁ・・あさっての午後2時からやるよ」

「あさって・・・そっかぁ・・ねぇ、検査終わったら山登れるんでしょ!?」

「・・そうだね、ただ、あんまり高いところまでは登れないよ」

「いいの、それでも・・・しゅうと一緒に登りたいだけだから・・・」

「・・・・・そう、ならいいけどさ」

「あたしさ、小さい頃は元気だったんだよ・・・いっぱい遊んで、いっぱいいろんなとこ行って・・・」

「ねぇ、しゅう。あたしどうしてこんな病気になっちゃったの??ねぇ、どうして??」

目に薄っすらと涙を浮かべて僕に抗議するアキ・・・

僕は言葉を失っていた

「・・・ごめん、しゅう。あなたのせいじゃないのにね・・・」

「アキ・・・」

・・・・・

検査当日

ストレッチャーに載せられたアキの脇に僕は立っていた

「ねぇ、しゅう。約束よ!一緒に山に登るって・・・」

そう言うと僕に向かって小指を出した

「うん。約束する。一緒に登ろうね」

検査室へ入るアキ

僕は隣のモニタールームへ入り検査を始めた

・・・・・

検査の結果、アキの病状は悪化していた

3ヶ月前の検査より、数々の数値は大幅にアップしていた

年齢が若いこともあるのだろう、だけど・・・

僕は、部長に登山のことを話した

「・・・そう・・・ハイキング程度なら連れ出してもかまわんよ・・・最後に思い出を作ってあげるのも医者としては必要なことなのかも知れんね・・・」

部長はカルテに目を落としながら寂しそうに言った

このままいくと、来月には自覚症状が一気に現れる・・・数値は如実にそれを物語っていた

今月中に行かないともう・・・二度と行けない

廊下を歩く僕の足取りは重かった

あんなに元気なのに・・・なんで・・・

ふと足が止まった・・・顔を上げるとそこはアキの病室だった

僕の体は病室までの距離を覚えていた

そんな自分が又嫌だった・・・

深呼吸してドアをノックする

「アキ、入るよ」

真っ直ぐに僕を見つめているアキがいた

その射抜くような視線に僕は凍った・・・

アキは僕に何を言おうとしているのか・・・

無言のまま僕とアキは見つめあった

ふと視線がゆるみアキは目を落とした

「アキ、登山だけどさ・・・」

「行けるの?」ぶっきらぼうに言うアキ

「・・・あぁ、行けるさ!だって約束したろ!!」

「・・・そう・・そうだよね・・・で、いつ?」

「うん、今度の日曜に外出許可もらったんだ」

「日曜・・・ねぇ、緑も一緒に行けるんだよね・・・」

「緑?・・・あぁ、これから連絡するよ・・多分大丈夫だと思うけど・・」

「多分じゃダメ!!絶対に3人で行くの!!絶対に・・・」

「・・・あぁ・・」

・・・・・

病室を出て、ロビーにある公衆電話へ向かった

緑のいる病院へ電話する・・・

「・・・あ、緑・・この間の登山の件だけど・・・」

僕とアキは同い年、緑は僕たちより2歳年下の子・・・

出会いは、アキと緑の方が早かった・・・僕は後から二人とであった

最初の二人には、僕が入る場所は無いような雰囲気があった

実際ホントの姉妹だと思ったくらいだ

それほど仲が良かった

「・・うん・・・そうだね、じゃ9時に駅前で・・・うん・・じゃね」

僕とアキは出会ってまもなく恋に落ちた

当時の緑は静かにそれを見守っているようだった

ただ・・・僕は自意識過剰ではないが緑が僕になんとなく恋心を抱いているようには感じてはいた

緑がそれを知っていたかどうか、このときはまだわからなかった・・・

・・・・・

日曜の朝、僕とアキは連れ立って駅へ向かった

秋晴れの空が気持ちよかった

久しぶりの外出にアキの機嫌もよかった

水色のシャツにブルージーンズ腰につけたウエストポーチ

そんなアキの姿を見るのは久しぶりのこと・・・

眩しかった

出来ればこの姿を永遠に失いたくない・・・そう思っていた

駅の階段に立つ人影を見るとアキは走り出し近づいていった

《そんなに走るなよ・・・》・・・老婆心か(笑)

なにやらごそごそ話す二人

「なに話てたの?」と僕

「へっへ~内緒!ね~緑・・」

「あは・・そうね・・・」

屈託のない笑顔のアキ・・・その脇で支えるように微笑む緑・・・

二人並ぶと改めて性格の違いが浮き彫りになる

ボーイッシュで活動的・・でも、どこか崩れ落ちそうな繊細さを併せ持つアキ

内気で無口・・でも、実はしっかりと自分を持っている緑

僕の目には少なくともそう映っていた

電車に乗り、郊外のキャンプ場へ向かう

最初は車で行くつもりだった

でも、アキはどうしても電車で行きたがった・・・

その日は僕の生涯の中でも決して忘れられない日になった

楽しかった

これでもかってほど笑った

僕も、アキも、緑も・・・

あんなにも楽しかった一日は今を以ってしてもない

走って、転がって、笑って、写真とって・・・

充実した一日だった

3人で星空も見た・・・それぞれの想いを星空に願った

叶うことのない願いを・・・

・・・・・

それから一月後

アキは逝った

帰ってからのアキは毎日のように3人で撮った写真を見ていた

繰り返し繰り返し・・・

その度に窓の外を見つめていたアキ・・・

最後の日、病室にはアキと僕と緑の3人・・・

アキのたっての願いであえてそうしてもらった

アキの手には3人で撮った写真が握られていた

3人とも泣いていた

3人の思い出をアキの命が尽きる寸前まで話した

写真を握り締めたアキの手を僕と緑は包み込んだ

3人の目から涙がとめどなく流れた

「 ありがとう 」・・・アキの最後の言葉・・・

アキの命の灯火が消えたとき、僕と緑は声を上げて泣いた

僕の胸の中で泣きじゃくる緑

僕にはその背中をさすってあげることしか出来なかった

葬儀も告別式も半ば放心状態の僕と緑

涙は枯れ果てたと思っていた・・・

でも・・・

・・・・・

僕は街を出た

とてもじゃないがここには想い出が多すぎた

病院ではいつのまにかアキがいた病室に向かっていた

立ち止まりふと思い出す・・・「アキはもういない・・・」

辛かった・・悲しかった・・・

きっと緑もそうだったのだと思う・・・

でも、当時の僕は自分のことで精一杯だった・・・

その辛さから逃げ出すように僕は街を出た

もちろん、緑にそのことを伝えることなんて考えてもいなかった

そんな余裕は当時の僕にはなかったんだ・・・

・・・・・



第2話 「再会」 へ続く・・・