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花火なんて見慣れてるはずだった。

お祭りが大好き。
私にとって花火大会は、浴衣と屋台がメインで花火はおまけ。

そう思っていた。
彼と一緒に観るまでは…。

一緒に観た花火は、それはそれは綺麗で…

私、恋をしてるんだ
私、幸せなんだって…

溢れる気持ちをギューっと噛みしめた。


あの日に似た夜風が吹く日は、ふと思い出して涙が出る。
それ程綺麗な空だった。


悲しい夜。
悲しい夜だった。

彼はまた私に涙化粧をほどこす。

部屋の電気を消して、
カーテンを開けたそこには、


月がそっと私を励ましてくれていた。


「ほら…」
彼が私にくれたもの。

窓の額に飾られたその月は、
あの時の花火のように、なんと綺麗なことか。



涙が出る程綺麗な空を
君といくつ観ることができるだろう。