【妊娠と仕事-9-】

妊娠検査薬で妊娠を知り、
産婦人科で
胎嚢確認→心拍確認

までの話。


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【7週目】


翌日、同じように出勤した。


その日は大雨で、転ばないように細心の注意を払い、ようやく職場に着いた。


いつも通りの職場。
いつも通りのメンバー。


少し変わったことと言えば、ボスが「誰か10円持ってない?」と聞いていることくらいか。






今日は郵送する書類があるという。
スタッフの誰か行って来てとのこと。




――雨だし、嫌だな。転ぶわけにはいかない。




「私行きますよ。」
スタッフの一人が言った。


要領のいい先輩は
「いいえ♪私が♪」


「何言ってるんですか。妊婦さんが。危ないから私が行きますよ。」
スタッフが返す。


ボスも「危ないからあなたはダメよ。」と言う。




…こう返って来るのは分かってたはずだ。




相変わらず彼女は賢い。



そのスタッフが行くだろうと思った私は、媚びに便乗することなく、昨日の続きを始めようとしていた。



その時、

「そうだ!!Nanaちゃんにお願いしようかな。」
ボスが言った。




え…?

何のために昨日言いにくい報告をしたんだろう…。

先輩には「危ないからダメ」と言ったじゃないか。




理不尽に思いながらも、断るわけにもいかない。



大雨の中、足元の悪い道を歩いた。



その日の郵便局はすごく混雑していて、思いの外時間がかかった。


また雨で歩きにくい。


いつもより遅くに職場に戻った。


「いつもより遅いから心配したよー。」
駆け寄るボス。


もう完全に心を閉ざしていた私は言葉通り受け取れない。


社交辞令の心配を示した後、ボスはまだ「誰か10円持ってない?」と聞いていた。


私も自分の財布を探すが、あいにくこの日は小銭がない。


「そうだ♪ここから出せばいいじゃないですか♪」
先輩が、職場の募金箱から10円を出す。


え…?


ボスもそれは名案だと言う。


は…?


無事10円を手にしたボスは、仕事の続きを始めようとする私に

「ちょっと待って」と制止する。




「はい、これ。」
給料袋を差し出す。




ようやく分かった。










――クビ。








私も鈍感になったもんだね…。




言葉は優しかった。
あたかも私の身体を心配しているように言う。

余程、後々のトラブルを避けたいのだろう。






10円…。
私の給料に10円足りなかったのだ。



私の財布を探しても、意味がないね…。
私が小銭を探している間、どんな気持ちで私を見てたのかな…。



さぞかし馬鹿な女だと思ったことだろうね。



解雇の準備をするために私を外に出したんだね…。



なかなか「私行きますよ」と言わない私に、さぞかしイライラしたことでしょうね。






あまりに急で…
うまく言葉を返すことが出来ない。



あれよあれよと
帰り支度が進み、気付けば私は玄関にいた。



職場のみんなに「おめでとう」と拍手される。




――もう、居られない。



いつものように出勤した。
いつもならまだ仕事をしている時間…。



こんな時間にもう帰路を辿ることになるなんて…。





何…この気持ち…。









――惨めだ。