【妊娠と仕事-9-】
妊娠検査薬で妊娠を知り、
産婦人科で
胎嚢確認→心拍確認
までの話。
**********************
【7週目】
翌日、同じように出勤した。
その日は大雨で、転ばないように細心の注意を払い、ようやく職場に着いた。
いつも通りの職場。
いつも通りのメンバー。
少し変わったことと言えば、ボスが「誰か10円持ってない?」と聞いていることくらいか。
今日は郵送する書類があるという。
スタッフの誰か行って来てとのこと。
――雨だし、嫌だな。転ぶわけにはいかない。
「私行きますよ。」
スタッフの一人が言った。
要領のいい先輩は
「いいえ♪私が♪」
「何言ってるんですか。妊婦さんが。危ないから私が行きますよ。」
スタッフが返す。
ボスも「危ないからあなたはダメよ。」と言う。
…こう返って来るのは分かってたはずだ。
相変わらず彼女は賢い。
そのスタッフが行くだろうと思った私は、媚びに便乗することなく、昨日の続きを始めようとしていた。
その時、
「そうだ!!Nanaちゃんにお願いしようかな。」
ボスが言った。
え…?
何のために昨日言いにくい報告をしたんだろう…。
先輩には「危ないからダメ」と言ったじゃないか。
理不尽に思いながらも、断るわけにもいかない。
大雨の中、足元の悪い道を歩いた。
その日の郵便局はすごく混雑していて、思いの外時間がかかった。
また雨で歩きにくい。
いつもより遅くに職場に戻った。
「いつもより遅いから心配したよー。」
駆け寄るボス。
もう完全に心を閉ざしていた私は言葉通り受け取れない。
社交辞令の心配を示した後、ボスはまだ「誰か10円持ってない?」と聞いていた。
私も自分の財布を探すが、あいにくこの日は小銭がない。
「そうだ♪ここから出せばいいじゃないですか♪」
先輩が、職場の募金箱から10円を出す。
え…?
ボスもそれは名案だと言う。
は…?
無事10円を手にしたボスは、仕事の続きを始めようとする私に
「ちょっと待って」と制止する。
「はい、これ。」
給料袋を差し出す。
ようやく分かった。
――クビ。
私も鈍感になったもんだね…。
言葉は優しかった。
あたかも私の身体を心配しているように言う。
余程、後々のトラブルを避けたいのだろう。
10円…。
私の給料に10円足りなかったのだ。
私の財布を探しても、意味がないね…。
私が小銭を探している間、どんな気持ちで私を見てたのかな…。
さぞかし馬鹿な女だと思ったことだろうね。
解雇の準備をするために私を外に出したんだね…。
なかなか「私行きますよ」と言わない私に、さぞかしイライラしたことでしょうね。
あまりに急で…
うまく言葉を返すことが出来ない。
あれよあれよと
帰り支度が進み、気付けば私は玄関にいた。
職場のみんなに「おめでとう」と拍手される。
――もう、居られない。
いつものように出勤した。
いつもならまだ仕事をしている時間…。
こんな時間にもう帰路を辿ることになるなんて…。
何…この気持ち…。
――惨めだ。
妊娠検査薬で妊娠を知り、
産婦人科で
胎嚢確認→心拍確認
までの話。
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【7週目】
翌日、同じように出勤した。
その日は大雨で、転ばないように細心の注意を払い、ようやく職場に着いた。
いつも通りの職場。
いつも通りのメンバー。
少し変わったことと言えば、ボスが「誰か10円持ってない?」と聞いていることくらいか。
今日は郵送する書類があるという。
スタッフの誰か行って来てとのこと。
――雨だし、嫌だな。転ぶわけにはいかない。
「私行きますよ。」
スタッフの一人が言った。
要領のいい先輩は
「いいえ♪私が♪」
「何言ってるんですか。妊婦さんが。危ないから私が行きますよ。」
スタッフが返す。
ボスも「危ないからあなたはダメよ。」と言う。
…こう返って来るのは分かってたはずだ。
相変わらず彼女は賢い。
そのスタッフが行くだろうと思った私は、媚びに便乗することなく、昨日の続きを始めようとしていた。
その時、
「そうだ!!Nanaちゃんにお願いしようかな。」
ボスが言った。
え…?
何のために昨日言いにくい報告をしたんだろう…。
先輩には「危ないからダメ」と言ったじゃないか。
理不尽に思いながらも、断るわけにもいかない。
大雨の中、足元の悪い道を歩いた。
その日の郵便局はすごく混雑していて、思いの外時間がかかった。
また雨で歩きにくい。
いつもより遅くに職場に戻った。
「いつもより遅いから心配したよー。」
駆け寄るボス。
もう完全に心を閉ざしていた私は言葉通り受け取れない。
社交辞令の心配を示した後、ボスはまだ「誰か10円持ってない?」と聞いていた。
私も自分の財布を探すが、あいにくこの日は小銭がない。
「そうだ♪ここから出せばいいじゃないですか♪」
先輩が、職場の募金箱から10円を出す。
え…?
ボスもそれは名案だと言う。
は…?
無事10円を手にしたボスは、仕事の続きを始めようとする私に
「ちょっと待って」と制止する。
「はい、これ。」
給料袋を差し出す。
ようやく分かった。
――クビ。
私も鈍感になったもんだね…。
言葉は優しかった。
あたかも私の身体を心配しているように言う。
余程、後々のトラブルを避けたいのだろう。
10円…。
私の給料に10円足りなかったのだ。
私の財布を探しても、意味がないね…。
私が小銭を探している間、どんな気持ちで私を見てたのかな…。
さぞかし馬鹿な女だと思ったことだろうね。
解雇の準備をするために私を外に出したんだね…。
なかなか「私行きますよ」と言わない私に、さぞかしイライラしたことでしょうね。
あまりに急で…
うまく言葉を返すことが出来ない。
あれよあれよと
帰り支度が進み、気付けば私は玄関にいた。
職場のみんなに「おめでとう」と拍手される。
――もう、居られない。
いつものように出勤した。
いつもならまだ仕事をしている時間…。
こんな時間にもう帰路を辿ることになるなんて…。
何…この気持ち…。
――惨めだ。