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たった紙切れ一枚だけど

たった紙切れ一枚の力は偉大




――5年て…


長い?
短い?


“たった”5年に思える




人間には二種類ある
約束を守るタイプの人間
守らないタイプの人間


夫は…
残念ながら後者


約束を守らなければならないものという認識がない


適当に約束しては平気で破る


付き合ってる時は
それが本当につらくて


愛されていないんだと
泣いた日もあった


約束していても
果たして守られるのか不安で
笑えなくなっていた日もあった




でも…


結婚――


10年先
20年先
の約束も具体的になる


ほぼ確実に明日がある
明後日がある


何年先も
きっと一緒にいる


歳を重ねていく姿を一番近くで見ていられる




紙切れ一枚分の約束
それが根底にあるだけで


心穏やかでいられる


そりゃ
また紙切れ一枚で
この紙切れ一枚の約束は
壊れてしまうこともあるけれど


これがなければ
いとも簡単に割れてしまうようなことでも

落として落として
ヒビが入って

いくつも
いくつも
ヒビが入って

繕って
繕って

それでも
繕いきれなくて

もうダメだ…
あと少しの振動で割れてしまう…



この段階まではなかなか割れないでいてくれるだろう


たった紙切れ一枚のクッション
それがとても重い




こんなに
こんなに


好きな人


喜びも
哀しみも

彼となら何倍にもなって


不安定の上に成り立つ幸せは
きっと長くは続かない


一瞬の解放のために
人生を共にすることなど


きっと不可能なのだろう



きっと
きっと

今だけ
今だけ

荒波のような恋
長くは続かない


だから記憶に焼き付けて




記憶だけで生きていられる――
それくらいの恋


こんなに
こんなに
好きな人と


結婚までは
望んではいけない


きっとまだ見ぬ別の人と
それなりの家庭を築き
溜め息まじりの毎日


きっと思い出しては生き返る
記憶を蘇えらせる時
私は生きるんだろう


そう思っていた


本気で思っていたのか
失うのが恐ろし過ぎるゆえの予防線だったのか


今となっては分からない




でも
それくらい好きな人とじゃなきゃ


人生最大の決断の一つ

――結婚

を決めることなど出来なかった


それくらい好きな人とじゃなきゃ
夫婦を築き、子どもを望むことなど出来なかった


それくらい好きな人と



夫婦になれて

子どもを宿した


日々お腹の中で成長していく




ありがとう――

ありがとう――



今、この気持ちが


抽象的で
漠然としてて

掴めそうで掴めない
届きそうで届かない

認識しようとしたものなら
スルリと逃げていく

だからもう存在などしないかと思ってた



“幸せ”というのかもしれない



相変わらず
目には見えない


認識してしまったら逃げていくかもしれない


だけど
もう怖くない



私は確かに感じてる

私は…





――幸せなんだ