仕事は順調に進み、暗い気持ちは忘れようとしていた。



が、


2回目の検査の日がやって来た。



もう10月。前回の検査から1ヶ月経つのか。


旅行に行ったり、仕事を始めたり…
無理に忙しくしていた1ヶ月だったように思う。

それは現実逃避だったのかな。


前回と同じ検査。
とは言え、慣れるようなものではない。



結果…



全く同じ数値。
精子数200万。


頭が勝手に動く。

期待値は精子数4000万だという。単純計算で20分の1?

共に期待値クリアの男女が、タイミングで妊娠の可能性は約20%と言われているから、私達の場合1%?

いや…運動率、液量も期待値を下回っているから、それ以下?

4000万という数値も期待値に過ぎず4000万“以上”が普通と考えると・・・(TДT;)))).....





私の頭は余計なことを考える。
一概に何%と言えるものでもないとは分かっているのに…。




夫の検査をまた1ヶ月後にという話に加え、
不妊治療専門の病院を紹介された。

当然のように、淡々と高度治療の説明がなされる。



医師に言われた言葉。


「自然妊娠は難しい」



やはり自然妊娠を望んではいられないのか…。



夫は自然妊娠を望んでいるため私の通院には反対したが、ひそかに私は通院を決心していた。

可能性が少しでも上がるなら、治療に挑戦したいと思った。




しかし


夫の気持ち…
男のプライド…




夫は多くを語らない。
そんな夫が言った言葉。

「俺は人より弱いのか」




夫は「強くなりたい」
漠然とずっとそう思って生きてきた人だ。

具体的に何に強くなりたいというわけではない。
ただ「強い人間」「善い人間」になりたいという。



今の夫にとっては、治療=弱いと認める行為にしか思えない。





返す言葉が見当たらなかった。



必死で繕った言葉も、届かない。



夫は
「子どもが欲しい」
「治療はしたくない」

この二つの気持ちに板挟みになっていた。