30分後、待合室に戻り、程なくして私達は呼ばれた。

このごに及んで、まだ期待していた。

安心するために病院に来たのだと。



結果は…200万/1ml。


???

この数値が何を意味するのか分からなかった

「良かった…。200万“も”あるんじゃないか。」

と思った。



しかし、先生から聞いた言葉は意外なものだった。

「桁がね…」

???

「せめて、あとゼロが一つは欲しいところなんだけどね…」



“乏精子症”


あまりに無知だった。


確かに…
オタマジャクシは何億もいると聞いたことがある。

しかし、バケツに200万匹もオタマジャクシがいたらウヨウヨしすぎで、気持ち悪いわけで…。

私の平和ボケした脳の中では、

「何億」も「何百万」も
「いっぱい」というカテゴリーに分類されたのだ。

今思うと、この思考は、
傷つきたくないための自己防衛だったのかもしれない。


診察が終わり、会計を済ませ、処方された漢方をもらいに薬局へ向かう。


薄々ヤバイ数値と気付きながらも、
まずは夫に「200万“も”いたね♪」と話した。

夫は夫で「ゼロじゃなくて良かった」と言った。

二人とも、お気楽な所があるのは似た者同士。


家に帰っても、夫が男性不妊なんだという実感などなく、ごくごく普通に過ごした。

夫は一人の時間が好き。

まとわりつきたい気持ちをグッと押さえて、

夫の世界には踏み込まないようにする。

夫が一人で何やら趣味に没頭し始めたので、
私は男性不妊について、ネットで調べてみることにした。

「6000万未満を乏精子症
とされている」

あれ?確か医師は「4000万がどうのこうの…」と言ってたけど…

2000万未満を…と書いているものもある。

定義は曖昧なのか?


ある不妊専門の病院のHPには
「まずはタイミング療法で自然妊娠を目指す…その後人工授精…(略)…

精子濃度が1000万以下の乏精子症の方には、まず人工授精…そして体外受精…顕微授精…」

なるほど…

6000万
4000万
2000万
1000万

定義は諸説あるようだが


先生も「桁が…」と言っていた通り、最低1000万は必要ということか…


え…???
ちょっと待って…??

「1000万以下の方は…“まず”人工授精…」?


自然妊娠は望めないの!?


すっと血の気が引くのを感じた。