「私達の問題ですのに、助けて頂いたうえにお怪我まで・・本当に申し訳ありませんでした」
ちゃう、ケガはドンくさかったからや。口には出さずにおいた。話の腰を折る気はないからな。
少しの静寂ののち彼女の声だけがゆっくりと時を遡っていく。
始まりは一年ほど前。
差出人のわからない一通の手紙から始まった。手紙の内容はたったの一文だけ。
《お前らを壊してやる》
ただの悪戯だと最初は思っていた。
オカシイと思い始めたのは手紙が届いてから三ヶ月過ぎた頃。父親の不可思議な自殺が起こってからだった。
いきなりの父親の死に呆然とする中、お葬式の香典袋に混じり届いた二通目の《手紙》。
手紙にはまた一文だけ。
《先ずは一つ壊したぞ》
彼女はそのまま警察へと駆け込み、助けを求めたらしい。
だが確証がなければ警察も動きはしない。
巡回を増やします、その言葉の対応だけでその日は帰宅するしかなかった。
彼女達は早くに母親を亡くしていた。だから父親が居なくなった今、まだ高校生の弟を自分が守らないといけないのだ。
その思いだけが震え出しそうな自分を奮い起こしていた。
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