ただの行き過ぎた物盗りなら、和志に見つかった時点で逃走していてもおかしくない。
それをせず間に入った和志にまで襲いかかったんなら・・。
「どうせ行き過ぎた知り合いか、姉弟喧嘩ってところだろうな」
少年の方をちらりと見れば結果は瞭然。
「良く御解りになりましたね!?」
「マジッ!!ナンデ?ナンデワカッタノ!?」
西脇さんと和志の声が部屋の中を交差した。
この際だ和志のことは空気と思え、いや思おう。話が進まん。
まだ何か続けようとする和志の口を手のひらで塞いでから、西脇さんに視線を向けた。
「それよりも、肝心なその《彼女》は何処に?」
妄想トークではあったが、聞いていた感じでは彼女自身も怪我をしているはずだ。
和志が見つけるまでに暴行を受けていたようだったからな。
「今は別室にてお話を聞かせていただい・・、丁度戻ってこられたようですね」
小さな音を立て開かれた扉の方を西脇さんが手招いた。
「この度は大変ご迷惑をおかけいたしました」
顔の痛々しい治療後のガーゼを隠そうともせず、まっすぐな姿勢でその女性は頭を下げた。
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