連れてきて見せろ?!
予想外の父の言葉に淡い期待をし、『~とか言いつつ、やっぱりダメ』的な意地悪な父を想像している。
そんな状況で玄関から飛び出した私は体が緊張で強張っているのか、体が気持ちに追い付いていないのか、足が上手く動かせていなかった。
家からほんの先の、すぐ近くに置いている、子猫が入った箱はまだあるのだろうか?
今さら走ったところで何か変わることがあるだろうか。
空き地の入り口に小学生の男の子達が何か見つけている様子が見えた。
私は、彼らが空き地に踏み込み姿が隠れたところ、あと数メートル後ろを走っている。

(いやだ!!)

がむしゃらに走って入り口にたどり着いたら、こんなやり取りをかましていた。

「この猫、8号通りの倉津さん家に連れていってみようぜ!」

だめ!だめ!だめ!

私は後ろから声もかけず強引に割り込んだ。
ガバッ!と箱を掴み持ち上げ、ピタリと止まり一言告げた。

とてもか細い声で「うちで飼うから…」

「え!?飼えるの?」

自信はない…、確証もない…。
もしものことを考えたら、連れていかないほうがいいかもしれない…。

(この子達にまかせたほうがいいのか…?)

優柔不断な私だが、体と足がもう家に向かい、男の子達は私を見送っている。
つまり、この時は頭で何をどう考えようが私の心はこの猫を『手離したくない!』ということだった。

家の中、父は白のおじさんTシャツと股引き姿で待ち構えていた。
無言で近づき箱を床に置く。
「この子……。」

運命の分かれ道である。

「箱から出せ!!」
「床に座らせて見せろ!!」

「…この子はまだ座れない!」

「いいから!座れなくていいから箱から出して置いてみるんだ!!」

私はそっと床に置いてみる。
近づきよく見ようとした父の足が子猫を踏み潰してしまいそうで怖い。

「ん~、小さすぎるな。…これは生きられないな…。」

!?は

あんまりな言葉に私は憤慨した。

…しかし

「よし!面倒みてやれ!」

(!?…え)

そのまま流れ作業のように父は母を呼び、出かける支度をさせて出ていってしまった。

飼っていいんだ、と理解するまで、間があったが、父がバタンとドアを閉めた音でやっと力が抜けた。
やっと手に入れた猫である。
母にポツリ、ポツリと「いいんだよね」と何度も確認する。

ゴロウ…
もう名前は決まっているみたいなものだ。