父が入院した時、すぐに尿道にカテーテルが入った。
「なんで尿道カテーテルを使うんですか?」と担当医師に訊ねると「入れとけばいいんだよ」と笑顔で言われた。
「えっ?」と口から言葉が漏れる。答えになっていないし笑顔の意味もわからない。

きちんとした理由を聞きたくて、私は再度質問を繰り返した。
すると温和な医師の顔が厳しい顔に変わり、その後「入れとけばいいんですよ」と少し強い声が続いた。
尿道カテーテルは、悪ではない。それはわかる。
手術のあとや排尿障害の時などに有効な処置だ。
しかしカテーテルの留置が長くなると尿路感染や不快感、出血などの弊害を伴うことが多い。
長い留置が続くと、自発的な排尿が困難になり二度と抜くことができなくなってしまうこともある。
またカテーテルをつけての移動は動きも制限される。
だから、使用される場合、この患者さんには本当にカテーテルが必要かどうかをしっかり考えなければならないと私は思う。
加えて、絶対に許されないのは医療従事者側、介護側の都合で簡単に使用されることだ。
尿失禁があるからとか頻繁な排泄介助が面倒だとか、そんなことで選択されるべきものでは決してない。
尿道カテーテルの使用は、その人のその後の生活を安易に不自由なものに変えてしまうことを忘れてはいけない。
父の入院した病院は地元の胃腸病院で、とても評判が良かった。
けれど、このカテーテルのやりとり以後も医師のおかしな発言は続き、結果私は、医者本意のろくでもない病院だと思っている。
尿道カテーテルを入院初日に入れられてしまったあと亡くなるまで、父は尿道カテーテルと共に生きた。
思い返せば始まりは「入れとけばいいんだよ」の一言からだった。