精神医学者の岡田尊司氏による「マインドコントロール」という本を読んでみました。


「マインドコントロール」「洗脳」とも言いますが、頭の良いインテリ層も多く洗脳されてしまうことから、その原理を紐解いて解説する本です。


今話題の、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)も、バッチリこのマインドコントロールに当てはまります。当てはまりすぎてびっくり。


1、多くの人は、理性的で頭が良い

  驚くことなかれ、洗脳されてしまう人の多くは、頭が良いそうです。

  何かに操られてしまうというよりは、理性的に物事を考えて行動しているそうです。

  それでは、なぜそんな人が洗脳されてしまうのか?


2、コミュニティのトンネル

  コミュニティが非常に限定され狭いそうです。

  コミュニティが狭いというのは、友達が少ないというのではなく、友達は多くても、その友達が全員特定の宗教に入ってたりするということです。

  みんな特定宗教に入ってるので、その宗教の話しかしなかったり、とにかく特定の思想に偏っている。

  頭が良いので、その特定の思想を一生懸命勉強して頭に叩き込みます。

  特に両親が特定宗教に入ってるというのは子供にとっては致命的です。


3、理想主義者である

  理想郷を目指して努力します。

  人に優しく、世話をして、その特定のコミュニティに尽くします。

  頭が良いのでその特定のコミュニティに対してはリーダー的な存在になることもあるでしょう。


4、裏切り者に厳しい

  理想主義者が特定コミュニティに尽くして努力しているので、当然ながらその裏切りに対しては厳しく当たることになります。

  また、コミュニティ内の人物が裏切りをしていないか、猜疑心を持って人を見ることになります。

  そしてコミュニティ外部の人間に対して敵対視して攻撃的になります。

  コミュニティ外部の人間の立場になってみれば、なんとか助け出したいと思ってやってることであっても、その人にとっては自分の価値観を否定する敵としか映らないわけです。



  ここまで読んでくると分かる人には分かると思いますが、ナサニエル・ホーソーンによる「紐文字」という有名な実話の本で出てくる「魔女狩り」と同じ状況です。

  イギリスから逃げ出してアメリカ大陸に移り住んできたプロテスタントが、まさにこの状況になりました。

  プロテスタントは本来神に選ばれし者を自認してCity upon a hill(理想郷)を目指して努力する人たちです。

  そしてそのコミュニティに対する裏切りに対して「魔女狩り」という悲劇が起きてしまいました。


この本を読んで思ったのは、特定の思想を持つことは悪いことではないけれども、他の考え方をする人もいることを受け入れるということ、そして認める、度量を大きく持つことの重要性です。


安倍元首相を暗殺した山上容疑者も、本来は優しくて努力家だったようです。

しかし統一教会と関わり(両親が熱心な信者なので関わらざるを得ません)、知らず知らずに度量の狭い考えに陥ってしまいました。


大人になるにつれ信者以外の友達とも関わるようになり、統一教会の異常さに次第に気付いたのかもしれません。

お金をむしり取る統一教会に次第に恨みを持つようになり、度量が狭いままにその関係者をとにかく殺してやろうと思って、実行してしまいました。


このように考えていくと、本当に山上容疑者が悪いのか(もちろんやったことは絶対的に悪いことですが)、やるせない気持ちになってきます。


彼こそが統一教会の一番の犠牲者なんじゃないか、という気持ちも起こってきてしょうがありません。