2005年に不動産バブルの不合理性を指摘してリーマンショックを予言、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・J・シラーさんによる本です。
この本を一言で言ってしまうと、
好景気と不景気はウィルスが広がるのと同じ動きをするので
経済学もナラティブを重要な指標として取り込むべき
ということになります。
今の経済学は、ナラティブ(事実に基づいた物語)を取り込んでいません。
このナラティブが口コミやSNSなどで広がり、結果としてウィルスが広がるのと同じ動きをする(この本ではヴァイラルという言い方をしてます)ということらしいです。
例えば、音楽や映画はどれがヒットするかは誰にも分からず、たまたまその時に話題に上りやすいものがランキングの上位に来るそうです。
このようにして音楽なり映画がウィルスが広がるようにヒットし、そしてウィルスが収束するように消えていく、ということです。
ここで、ナラティブを事実に基づいた物語、とましたが、ナラティブは真実だろうが嘘だろうが関係ないそうで、もっともらしい話、人の感情を揺すぶるような成功物語だったり悲惨な話だったりであれば広がりやすく、関連する話が多ければ多いほど加速度的に広まりやすくなるそうです。
これらを意図的かどうかわかりませんが、うまく応用しているのが、暗号通貨(ビットコイン)だそうです。
ビットコインはサトシナカモトが作ったとされていますが、この人自体は全くの謎の人物です。(憶測が憶測を呼び話題に上りやすい)
そして、技術的な話も、暗号技術や半導体、量子コンピュータの話として広まりやすく、またイデオロギー的な話としても、政府や中央銀行が不要になるなどの無政府主義的な話、アナーキズムとして広まりやすい。
ビットコイン購入者の話としてテスラ自動車のイーロンマスクや、ビットコインが出始めの頃にビットコインでギャラを受け取ることを断り、大後悔している歌手の話など、そのナラティブには枚挙にいとまがありません。
この本ではビットコインが最終的にバブルで終わるのかどうかには触れていませんが、今のロシア情勢とかを見てみると、経済制裁のがれでビットコインが利用されるなど話題に上ったりしているので、ビットコインはまだしばらくは続くのかもしれません。
ただ個人的には、お金としては乱高下しすぎでリスクが高すぎるので本人確認などの規制が徹底されてマネーロンダリング的な使い方ができなくなった時点でなくなっていくんじゃないかと思ってます。
