倒産寸前の東芝が、何故そうなってしまったのかを綿密な調査でレポートした本で、非常に面白かったです。映画化しても面白いんじゃないか?と思うほどに面白い本でした。
内容をざっくりとまとめると、
1、原発総合パッケージの輸出
経済産業省によって行われた政策で、原発総合パッケージとは、以下の3つをパッケージとして輸出しようという政策だそうです。
①建設資金・ウラン燃料の確保(日本の総合商社が担当)
②運転ノウハウの提供(東京電力が担当)
③原発建設(東芝・日立等が担当)
これによって日本の収益をあげようという狙いがあったそうです。
2、原発パッケージの輸出が国策として強行された
東芝は当時(今も?)ブラック企業化していたそうで、上の言うことは絶対の社風。
土光さんという優れた経営者(東芝外部から来た社長)が残したチャレンジという言葉を、のちの社長たち(東芝内で出世)が「上の言うことは絶対」という誤った使い方で部下に強制したそうです。
その体制は第二次世界大戦中の軍部とそっくりだと、この本では言っています。
もちろん、事実上の粉飾決算も社長命令で行われましたが、部下は違和感を覚えながらも従順に従います。
まさにブラック企業!そして後に株主から訴訟を起こされますが、検察からの責任追及は一切なし!
3、経団連会長になることが夢
原発パッケージの輸出という国策を強行する見返りに経団連会長にしてもらうという、東芝トップの身勝手が会社に損害を与える結果になったそうです。
4、日本にはインテリジェンスがない
インテリジェンスってスパイってことですが、これがないことで日本は外国企業からやりたい放題にやられます。
列挙すると、
①1970年、イラン・ジャパン石油化学
三井物産が石油化学のプラント建設に合意、建設中にイラン・イラク戦争が勃発。
1300億円が無駄になる。
②1990年、油田権益をめぐり三井物産と英国BP社が争っていた時、何故か英国BP社が突然手を引きます。
三井物産は喜んで油田への投資金を支払った3日後、クーデターが勃発。
投資金は全額が無駄になる。
③2009年、カザフスタン国営企業のカザトムプロム社(ウラン採掘企業)
東京電力・中部電力・東北電力・丸紅・東芝が出資。
後にカザトロプロム社長が権益に絡む不正で逮捕。親ロシア派の社長が就任し、プロジェクトは凍結。
④東芝が米USEC(ウラン濃縮企業)に3750億ドル出資。
2014年に同社は事実上の倒産。出資金は消失。
アメリカにはCIAが、ロシアにはSVR(旧KGB)という諜報機関がありますが、日本には同様のものがありません。現在もないのでこれからもやられ放題です。
5、日本の企業全体の問題
2と似てますが、ブラック企業の問題で、日本の企業は全体的に大企業ほど当てはまる問題です。
以下は本書からの引用です。
効率よく仕事を終わらせて早く帰る社員より、だらだらと会社に残っている社員の方が「頑張っている」と評価される。「みんなで汗をかく」ことが何より大事で、成果は問われない。突出した個人の成果は、むしろ嫉妬の対象になるから危険である。(引用ここまで)
突出した個人の例として、かつて東芝にはフラッシュメモリ(現在のSSDに活用される技術)を開発した舛岡富士夫さんという人がいたそうですが、研究を続けられなくなって会社を辞めたそうです。(なんて勿体無いことを!)
以上がざっとした内容です。
東芝が凋落したおかげで、現在原発開発ができるのは日立と三菱重工だけになりました。(東芝は廃炉に注力)
ライバルの東芝がいなくなったことで、現在英国の原子炉開発では日立が矢面に立たされています。
つまり、原発総合パッケージの輸出は以前として続けられています。
安全保障の観点から原子炉開発は必要というのは分かりますが、上の1〜5で現在何が変わったのかを見ていると、日立大丈夫か?と思わずにいられません。
・次の経団連会長は日立のトップがなることが決定。
・日本には以前としてインテリジェンスがない。
これだけでも東芝の後追いをしてる感がすごくて危うさを感じるのですが、あとは日立がブラック化してないかが心配です。
日本企業全般の風土を考えるとこれも怪しいかもしれません。(頑張ってるアピールの上手い人だけが残り、優れた社員は辞めていく。)
数年後、日立は一体どうなっていることでしょうか?
