ポール・クルーグマンと同じくノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツの著書を読んでみました。
スティグリッツって、ウォールストリートでアメリカ人が「私たちは99%だ!」みたいなプラカードを掲げてデモをしたことが話題になったことがありますが、あれの論理的根拠を示した人として有名です。
基本的に新聞連載の再録なので、同じような内容の重複が多々見受けられ分厚い本ですが、言っていることは大体以下のような感じになります。
1.トマ・ピケティの偉業と危険性
「21世紀の資本」でトマ・ピケティは広範囲かつ長期にわたって格差が広がることを証明したが、それによって資本主義自体が否定される危険性がある。資本主義は正しく規制すれば良いものである。
2.アメリカは機会均等の国ではなくなった
アメリカンドリームは他国に比べると皆無に等しい
人種差別、女性差別も未だにある
3.アメリカは世界に類を見ない格差社会
格差だけでなく、それが子々孫々にまで連鎖する社会。
有名大学に入るには親の年収が5000万円以上必要で、学費のローンは自己破産したとしても借金帳消しにはならない。
ここ数年は実質賃金(物価上昇率を除く賃金)が下がり続け、特にリーマンショック後の賃金上昇分は、その95%が所得上位1%の懐に入っている。
4.アメリカは金持ち優遇社会
金持ちは中低位層の人々よりも低い税率の税金しか支払っていない。
銀行は中低位層の人々を騙して家を買わせ、危機が発生すると金持ちの銀行は税金で救われ、CEOに多額のボーナスを支払い、中低位層の人々は家を追われた。
これが合法とされるのは、銀行は裁判を起こす資金を持っているが、中低位層の人々はその資金を持たないから。
5.国を弱体化させるものの正体
実物やサービスを生み出さない経済活動(地代家賃や金融取引)から利益を得ることを、レントシーキングと言う。
良い教育を受けられる人(金持ちの子供)は、本来は実物やサービスを創造する仕事に就くべきだが、給料が高く実物やサービスを創造しないレントシーキングに従事する。これにより国力が低下する。
格差の拡大は教育の機会を奪い、本来有能な貧者が実物やサービスを生み出す機会を喪失している。これにより国力が低下する。
6.格差の原因
アップルやグーグル等の金持ちは租税回避(タックスヘイブン)をして税金を支払わないことで、中低位層より税率が低くなり、ますます資産を増やす。
レントシーキングの収入に対する税率が、労働による税率よりも低い。
金持ちは政治家に働きかけ、政策を金持ちに優位のものに変えてしまう。1%の1%による1%のための政治。
金持ちが失敗すると巨額の税金で救い、金持ちに騙された貧乏人は家さえも強制的にはぎとられる。
7.日本を手本とすべし
日本も最近は格差が広がりつつあるが米国ほどではない。
GDP成長率が低いが、中身をみると労働人口が減っているにも関わらずマイナス成長していないのは見習うべきものがある。一人あたり成長率は高い。
ざっとまとめると以上の感じになりますが、他にもTPPの話題や、特許法改正で安価なジェネリック医薬品が使いにくくなる(=製薬会社ボロもうけ)とかにも言及していて、興味深かったですが、長くなるのでこの位で終わりにします。
興味のある方は、分厚い本ですがぜひ本書をお読み頂くことをおすすめ致します。
スティグリッツって、ウォールストリートでアメリカ人が「私たちは99%だ!」みたいなプラカードを掲げてデモをしたことが話題になったことがありますが、あれの論理的根拠を示した人として有名です。
基本的に新聞連載の再録なので、同じような内容の重複が多々見受けられ分厚い本ですが、言っていることは大体以下のような感じになります。
1.トマ・ピケティの偉業と危険性
「21世紀の資本」でトマ・ピケティは広範囲かつ長期にわたって格差が広がることを証明したが、それによって資本主義自体が否定される危険性がある。資本主義は正しく規制すれば良いものである。
2.アメリカは機会均等の国ではなくなった
アメリカンドリームは他国に比べると皆無に等しい
人種差別、女性差別も未だにある
3.アメリカは世界に類を見ない格差社会
格差だけでなく、それが子々孫々にまで連鎖する社会。
有名大学に入るには親の年収が5000万円以上必要で、学費のローンは自己破産したとしても借金帳消しにはならない。
ここ数年は実質賃金(物価上昇率を除く賃金)が下がり続け、特にリーマンショック後の賃金上昇分は、その95%が所得上位1%の懐に入っている。
4.アメリカは金持ち優遇社会
金持ちは中低位層の人々よりも低い税率の税金しか支払っていない。
銀行は中低位層の人々を騙して家を買わせ、危機が発生すると金持ちの銀行は税金で救われ、CEOに多額のボーナスを支払い、中低位層の人々は家を追われた。
これが合法とされるのは、銀行は裁判を起こす資金を持っているが、中低位層の人々はその資金を持たないから。
5.国を弱体化させるものの正体
実物やサービスを生み出さない経済活動(地代家賃や金融取引)から利益を得ることを、レントシーキングと言う。
良い教育を受けられる人(金持ちの子供)は、本来は実物やサービスを創造する仕事に就くべきだが、給料が高く実物やサービスを創造しないレントシーキングに従事する。これにより国力が低下する。
格差の拡大は教育の機会を奪い、本来有能な貧者が実物やサービスを生み出す機会を喪失している。これにより国力が低下する。
6.格差の原因
アップルやグーグル等の金持ちは租税回避(タックスヘイブン)をして税金を支払わないことで、中低位層より税率が低くなり、ますます資産を増やす。
レントシーキングの収入に対する税率が、労働による税率よりも低い。
金持ちは政治家に働きかけ、政策を金持ちに優位のものに変えてしまう。1%の1%による1%のための政治。
金持ちが失敗すると巨額の税金で救い、金持ちに騙された貧乏人は家さえも強制的にはぎとられる。
7.日本を手本とすべし
日本も最近は格差が広がりつつあるが米国ほどではない。
GDP成長率が低いが、中身をみると労働人口が減っているにも関わらずマイナス成長していないのは見習うべきものがある。一人あたり成長率は高い。
ざっとまとめると以上の感じになりますが、他にもTPPの話題や、特許法改正で安価なジェネリック医薬品が使いにくくなる(=製薬会社ボロもうけ)とかにも言及していて、興味深かったですが、長くなるのでこの位で終わりにします。
興味のある方は、分厚い本ですがぜひ本書をお読み頂くことをおすすめ致します。
