小さな友へ
心からの手紙


わたしが初めてあなたに会った時

あなたは生まれて18ヶ月目の
赤ちゃんでしたね

あなたは初めて会ったわたしの手をとり

7階建アパートの螺旋階段を
一緒に歩いてくれました

あなたは小さくて丸くて上機嫌でした
斜め右のわたしの顔を見上げ
楽しそうに
嬉しそうに
一段一段を上りました

パリの螺旋階段の手すりは
大きく間があいていて
あなたが落ちないように
いつも気をつけていました

来る日も
来る日も
この階段を上って
あなたと家に帰ったね

今では
あなたは
青く
しなやかな
ツユクサのように
可憐な少女になりました

青い色が好きで
綺麗な箱が好きで
切り花を活けるのが好き

そして
美しい絵を
壁に飾るのが好き

あなたは
バナナが好きで
クレープや
パンケーキ
アイスは
バニラと抹茶が好き

チョコレートのスプレッドが好きで
マロンのクリームは一晩で食べて
翌朝お腹をこわしたね

キャラメルが好きで
何度も
歯医者に行ったね

あなたは
優しくて

親友の心が壊れて
6歳から話せなくなって
学校でも困っていた時に
手話を習って
あなたはみんなに通訳していたね

その子と公園で遊ぶ時
知らない子が来て
話せないのを馬鹿にすると
あなたは
わたしに何でも聞いてって言ったでしょ
って友だちを守っていたね

あなたのパンがひと切れしかない帰り道
お姉ちゃんに半分あげていたね

笑って
満足そうで

あなたはいつも
誰かを思っていた

進路が分かれた幼なじみたち

学校が違っても
お休みの日には
みんなで集まっているね

わたしはあなたの
そういう優しい
変わらない愛情をなにかに注ぐのを
ずっと見ていたよ

あなたは小さい
あなたはまだ若く
まだ12歳だ

でも
あなたはまるで
海のように
大地のように
寛容で
慈悲深く

それでいて
タンポポのように幼く
清らかだ

あなたは
自分の
純粋さを知らない

自分の姿を
映したことのない
薔薇のように
気高く柔らかく
かぐわしく
そして
慎み深い

あなたの持っているものを守りなさい

それは愛
友情
尊敬
驚き
感動
歓喜
感謝
憧憬
踊り
真っ直ぐな心
試練の後の真実

あなたが好きだ

わたしは40年もあなたより先に生まれた

でも

あなたはわたしの前を歩き

その美しい心を見せてくれる

夜明け間近の
朝露のような
触れてはいけないような
幻のようなあなたを
わたしは
心から
尊敬しています

あなたと
出会えてよかった

あなたと出会えて
嬉しかった

あなたを
ずっと想うよ

あなたの幸せを願うよ

ずっと
ずっと
いつまでも