長い読書 / 島田 潤一郎
本を読みなさい
ぼくのまわりに、そんなことをいう人はいなかった
でも、実家には本が並んでいたし
寝床で父も母も毎夜
読書灯をつけて雑誌や文庫本を読んでいたから
ぼくも自然と本というものに惹かれた
本は強制されて読むものではない
読みなさいと言われたって
読むことにはならないだろう
身近な人が読んでいる背中を見て
自然と自分も読んでみようと思う
それがあるべき姿なのだろう
音楽ばかり聴いていた不良高校生が
いつの間にか読書に夢中になって
しまいには作家になってしまったハナシ
そうなるには、いくつかの要因があるのだけど
小説の力というものは
100%嘘をつきとおすことによって
そのすべての嘘が最後には全部真実になってしまう
そんな力なのです
フィクションだとわかっていながら読み始めて
次第に主人公に感情移入するうちに
自分が追体験しているような気持になる
それが優れた小説のチカラ