母が亡くなって葬儀が終わった直後に、母の携帯を処分してしまった父。

連絡先も写真も戻ってこない。


母の大親友で「まきちゃん」という方がいた。

いつも、まきちゃんまきちゃんと言っていて、私は高校の同級生としか知らなかったが、母が自分の部屋で長電話したり、元気な頃はよく会って茶飲み話をしていたりしていた。


そのまきちゃんの連絡先が、母の遺品で高校の同級生名簿から分かった。まきちゃんのところだけ、母の字で携帯電話の番号が書き足されていた。


ずっとその番号に電話していたが、繋がらず、諦めかけていたところ、まきちゃんから折り返しの電話があったのだ。「知らない番号からなのでいたずら電話かと思っていた」とのこと。


思わず帰宅途中の電車から降りてまきちゃんと長電話してしまった。


私が知らなかった母のこと、友達のこと、少しだけまきちゃんから知ることができて嬉しかった。母が好きそうな明るいはきはきとした方だった。


また連絡することを約して、再び電車に乗った。母の死から今まで沈んだ気分が続いていたが、今日は明るくなれた。


母が自分の死を真っ先に知らせたかったのは、まきちゃんだと思いますと言って連絡をいただいた御礼を申し上げた。