「数故意犯」って、「スーコイハン」、いつも中華料理のように聞こえます。紹興酒といただくと美味しそうですね。
まあ、それは置いておいて。
さて、実は先日の転落事例(東京高判平成13年2月20日)には、木村光江先生のお書きになった事例問題集(『演習刑法・第2版』(東京大学出版会,2016)においては続きがまだあって、それはこういうものでした。
「Yがマンションの9階から転落したら、下にZが歩いていて、そのZの上にYが落ちてきて、Zも死んでしまいました」
この場合のZに対してのXの罪責も検討せよというものでした。そこでこれも考えてみました。
まず前提となっているのは、これまでやってきた通り、XのY殺害に関しては、刺突行為から「つかみかかる行為」までが一つの実行行為と認定したことでした。すなわち、殺意は、最初は包丁で刺し殺す意思、次には出血多量のまま放置して、死なすという不作為の殺人の意思、さらには、ベランダに逃げた被害者を部屋に連れ戻し、ガス中毒死させるという意思、というように転々変わっているのですが、それでも一つの殺意として続いており、そして、ガス中毒死させようと思ってベランダから連れ戻すときに、手すりの上にいる被害者につかみかかったら、そのまま被害者が転落していってしまったわけです。そして、その「つかみかかる行為」を、「殺害行為の一部」と認定して、刺突から「つかみかかる行為」までが一つの実行行為と認定したわけです。
そして、その実行行為から、Yの死亡とZの死亡が発生しました。
Zに対しては、とくに殺意はありませんでした。だから、成立するとしても、せいぜい過失致死罪(210条)であるとも考えられます。(すなわち、9階から落とせば下に誰かが歩いていることを予見できたはずであり、Xにはそれを避ける義務があったが、これを怠った)
しかし、これは単なる過失致死罪とはちがいます。Xは、Yを殺害しようとしているうちに、Zを巻き込んでしまったのでし。ですから、過失致死罪よりかは重い刑事責任を問えると思います。すなわち、Xに、Z殺害の故意犯が成り立つかが検討対象になります。