実行行為4 | 藤原の田中のブログ

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 それから、本問で一番難しいのは、「つかみかかる行為」をどのように評価するかだと思います。

 「つかみかかる行為」は、通常は殺人行為ではありません。つかみかかっただけでは、とても人は死にません。これを殺人行為あるいは少なくとも、殺人行為の一部(それはすなわち殺人行為)にもっていけるかです。

 これで思い出すのは、平成16年のクロロフォルム事件決定ですよね。

 あの時最高裁は、第一行為と第二行為が時間的場所的に近接していること、第一行為は、第二行為に及ぶ必要不可欠な行為であること、第一行為が成功すれば、第二行為まで障害がないこと、これらの条件がそろえば、第一行為を始めた時点で殺人の実行行為があったとみてよいと判示しました。そして、その裏には、第一行為の「クロロフォルムをかがせる行為」そのものに結果発生の危険性が十分にあったということが、認識されているようです。

 本件平成13年判決は、クロロフォルム事件決定があった平成16年より前のものですが、やっぱり重なるところがあると思います。

 時間的場所的近接性、第二行為(予定された殺害行為)を行うのに不可欠な行為、よって、第一行為も殺人の実行行為の一部(すなわち殺人行為)だといえること。重なる部分があると思います。

 ただちがうのは、クロロフォルム事件では、第一行為の「クロロフォルムをかがせること」というのが、場合によってはそれで相手方の死を誘発しかねない危険性を含んだ行為だった。だからまた、殺人行為だと認定しやすいんだと思います。

 しかし、平成13年判決では「つかみかかる行為」です。これを殺人行為とするには、クロロフォルム事件より念入りな説明が必要だと思います。

 その点で、刺突行為からの「一貫した殺意」でそれを補ったといえるのではないかと思います。「つかみかかる行為」の時点で殺意は連続して続いていたのであり、Yもそのことをわかっていたからこそ、死の恐怖を感じ、「つかみかかる行為」に必死で逃げまくったといえると思います。

 このように殺意をとらえることによって、初めて「つかみかかる行為」も殺害行為の一部であるという言い方ができたのではないかと思います。「殺害行為の一部」というのは、本問のキーワードだと思います。それから「殺意の継続」。「第一行為は第二行為のための必要不可欠な行為」なども。