自由律句歌集『歌の本』 第二章 | black kairitu

black kairitu

デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 前回の続きである。私がツイッター上で詠んだ自由律俳句・短歌を加筆・修正して掲載する。
 
 
 第二章 ダイドードリンコ

 苦手な人にメールをする

 右の首と肩がこったので筋を取りはずす

 味噌汁をひっくり返したおじさんと電話で話す

 味噌汁をひっくり返したおじさんとフランス料理を食べに行く

 胃に差し込む激痛セルジューク朝

 鎮静剤飲んだら治ったガズナ朝

 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を図書館でかりようとしたら予約が153人

 目が痒いので睫毛を全部抜いてゐる

 音楽よりネタがメインのエレキギター弾き語りを見る

 お茶は出すけど自分でコップを持ってきてください

 ツインボーカルでのリハは楽器隊が全員不在で狩人みたいになる

 すべる間をトークで潰し何とかする

 ご飯大盛りカレーのルーだけを先にたいらげようとしている人が心配でご飯が喉を通らない

 15年ぶりの自転車並走で会話する

 豚トロはもう無理な歳

 焦げている豚トロを食べようとして止められる

 たった一人でどん兵衛を食べている人を横目に缶コーヒーを買う 

 今買ったばかりの食券をなくしたのでもう一度買う

 iphoneがないのにケースを注文する

 お母さんがお父さんの弁当と僕の弁当を間違えたから肉が少ないと若者に告げられる

 iphoneがないのに保護するフィルム買う

 生まれて初めてアルペンに入る

 疣痔なのにチゲ鍋を食べる

 疣痔なのに麻婆豆腐を食してしまう冬である
 
 『けいおん』の最終回で涙が二粒落ちました33歳の秋

 当たり付き自動飲料販売機で当たったが放っておいてみた

 キャバクラ嬢が車に轢かれていた
 
 自動販売機で缶コーヒーのボタンを押すとミルクセーキのホットケーキ味が出てきた

 再び缶コーヒーのボタンを押すと缶コーヒーが出てきた

 ミルクセーキのホットケーキ味の原材料名をじっくりと見る

 
 以上、単なる「あるあるネタ」じゃないか。いや、違う。「あるあるネタ」とは共感を得ることを目的としたネタの種類・種別である。その点からして、私は共感を得ようとは思っていない。また、これらの句歌は事実を元にしている作品はあるが、完全なる想像上の作品も多く存在する。ただ、何かを切り取ろうとしていることは事実かもしれない。見えた物、見えない物。それらを切り取り表に出すことによって、何かが起きることがあるかもしれない。何かを変えることはできないかもしれないが、何かを発表することはできるのである。
 今日も私は何かを見ている。乱視の私は、診ているのである。