前の記事にも書いたようにレーシングメカニックはレースをする前に相当な肉体労働をしている。 しかし、それで疲れてしまってはメカニック失格である。
現場での作業について、書ける範囲まで書くとしよう。(ピットが設営されている上での作業)
まず、現場に着いたらタイヤの内圧を確認する。 内圧とは、簡単にいうと空気圧のこと。 ロードレースではタイヤウォーマーは当然使う。
タイヤは温度が上がれば内圧が上がり、温度が低いと内圧は下がる。
内圧は大概、タイヤウォーマーの電源が入っていない朝に調整する。
普通の整備士が空気圧を調整するときに、リッターSSなら3.0kg程度エアーを入れることもあるが、レースでタイヤウォーマーを使うとなると、タイヤの温度が上がった時点で内圧がバンバン上がるので、コーナリングでのフィーリングが大きく変わってしまう。
具体的には空気が熱により圧縮され、内圧が上昇したあげく、タイヤの接地感が薄れてしまい、トラクションをかけにくくなってしまう。
それを避けるために、市販車に比べて内圧は低めに設定する。
なので雨の日の走行となればまた、内圧も変わる。
気温が下がるので、内圧は普段より高くしなければならない。
ちなみに内圧はタイヤメーカーのテストでは0.1kgごとに変えてテストをするため、ライダーのベストなセッティングをするには、ライダーも高いアンテナを持つ必要がある。
内圧を確認後は発電機を回す。ドラム缶や発電機、車両の残ガスを確認する。
車両のほうは気温や湿度を見て、使用するタイヤを選定する。路面温度を測り、それにあったR(コンパウンド)のタイヤを選ぶ。
Rの選定は気温に左右されるため、走行直前まで車両にはタイヤをつけない。
あとは水の確認をする。
レーサーの場合、ほぼラジエーターが巨大なものに変えられている。
そのため、気温によりオーバーヒート、もしくはオーバークールを防ぐためにラジエーターのフィン部にガムテープを貼ったりする。
ちなみにこのガムテープは1枚で水温が約5℃変わる。
あとはセッション中にセッティングを変える場合もあるので、注射器にFフォークオイルを入れて備えたり、使う可能性のあるタイヤにはスプロケやディスクをセットし、セッション1時間前にはウォーマーの電源を入れ、段取り八分で仕事をする。
あとは新しくエンジンを組み、予備マシンに載せた場合には慣らしが必要なので、そのマシンもサスセッティングを含めた車両作りが必要である。
メカニックはレーサーのコメントをセッションごと、レースごとに細かく聞き、ネガティブがあればそれを改善し、よりライダーを成長させ、速く走らせなければならない。
なのでライダーの要望にあわせてフォークの油面やスプリングレート、プリロード調整に二次レシオ(減速比)調整、マップ変更をする。
しかし、本当に速いライダーは多少の悪条件でも速く走れてしまうので、セッティングを下手に煮詰めるとライダーの成長を妨げてしまうこともあり、そこらへんはメカニックの判断になる。
セッション中の作業は上記に挙げたプリロード変更の他に、本番ではあまりやらないが、テストだとタイヤ交換や二次レ交換は頻繁にやる。
ホイール交換には作業スピードを上げるために自作した専用工具も存在する。
あとはタイムボードを出したり、タイムを計測したり、2Dと呼ばれる高価な計測機の各センサーをPCで読み取ったりと多くの作業がある。
レース以外では、レース毎にチーフメカニックはメインスポンサーに対し、走行データや書類を作り提出しなくてらいけない。
また、ピットにはバイクメーカーの関係者を始めとしたエンジニアやタイヤメーカーの開発スタッフ、スポンサー様や有名ライダーなど多くの人が出入りする。
チームのOBでSBKやmotoGPで戦ってきたライダーやスタッフがアドバイスや応援をしてくれる。
有名人などのすごい人ばかりで夢のような仕事かもしれないが、リスクは高い。
こんな話はしたくはないが、レース中にライダーが死亡した場合は、まずメカニックが疑われる。
事故報告で自分の過失(ミス)があれば、担当メカニックといえど逮捕され、処分を受ける。
これは実際にある話。
実際、転倒しただけであってもメカニックはその責任が自分にあるかもしれない。
マシントラブルかもしれないと、不安になる。
なのでメカニックは必ず作業の際には何度もトルクレンチで確認し、安全に速く走れるか自分への不安要素を減らさなければならない。
また、ライダーに信用されないメカニックもこの世界では当然NGである。
これは一般の販売店に勤める整備士も同じ。
この世界ではライダーを速く走らせるためにはまず、信用を得なければならない。
そのために確実な作業を徹底する。
Android携帯からの投稿





