寒かったから、マフラーをつけて学校に行った。


ここから防寒具の役割を一気になくした俺のマフラー。


俺がマフラーをつけるのは、はっきり言えば「寒いから」ではなかった。


放課後に、授業中に、マフラーをアイツがいじるから。


帰ろうと、首に巻くと首を絞めてくる。


「おい、苦しい止めろって」


段々本気になってくる。


「ん?そろそろやめようか達哉君、お姉ちゃんリアルに死にそうだよ?」


変な所は優しい…というかこれは流石にやったら死ぬしな。


「しょうがねぇなぁ」


達哉はにやりと笑って力を緩めて俺に抵抗の余地を与えてくれる。


なんだろうなぁ、こういうとこも好きなんかな。


達哉は身体能力が人一倍高く、男子の中でも凄い。


一回社の腕は力の加減をミスって折った事があるがな…


こうして解いたマフラーを自分に巻いたり。


「これ俺のやで」


ふざけてても、俺のもんが欲しいって言われたら


あげたくなりますよ。

この三つはどうしてもどうしても、大事な場所にならざるを得ない。


教室はずっとずっと達哉を見て、一日が本当に飛ぶように過ぎて。


そういう場所だったから。


中庭は、駐輪場とほぼ同義。


耐震工事で半年ぐらい中庭が駐輪場だったから。


駐輪場はよく達哉たちと遊んだ場所。


そして、中庭の駐輪場は、本当に思い出深い。


一つは、毎朝皆がどんな顔をしてやってくるのか、


そんな小さな事を見るのが、好きだったから。


うちのクラスは本当に仲が良くて。


みんな元気で生き生きしてたから。


一階だった教室は誰が登校してるかよく分かった。


荷物を窓から放り入れて、靴箱で靴を履き替えて教室に入る、


それがクラスの常識だった。


学校が楽しみでならなかった俺は毎朝早くに学校に来て、


アイツが登校するのを待った。


今日は遅刻かな、とかまた楽しくなるぞ、とか。


毎朝毎朝飽きもせず、窓からアイツの姿が見えただけで


馬鹿みたいに喜んでた。


コレは、俺の毎朝の、顔。

最近密着度高ぇ。


こいつ絶対確信犯だわ。


そんでもって俺もずるい。


とりまきの6人が毎回チャリキーやらを放課後に奪いに来る。


分かってるけども、達哉と絡めるから、取られてからじゃないと動かない。


だってさ、横で色々馬鹿みたいな事言ってくれんだよ。


「おい、変態レズ!やめろキモイ暑苦しい」とか。


で、俺はその言葉に腹を立てたフリをして。


「馬鹿かてめぇよりマシだよ。大体可愛い女の子は俺のオアシスなんだ」


そう言って蹴って。また馬鹿みたいなひやかし。


…ごめんな、俺こいつらと殴り合いしてる時は「男として」接したけど、


てめぇが居ると全然だ。


向こうは俺を男子だと思ってるから首を絞めたりしに密着はする。


まぁ、ほとんどの場合直接制裁を下さないのが達哉だったんだが。


俺の頭のすぐ後ろにあいつがいる。


「つーかまーえたー♪」


にやって笑った顔が頭に出てくる。


俺の心臓の音が聞こえんじゃないかって。


人一倍鈍い達哉にも、分かるんじゃないかって。


女として、恋人として例え一緒に居られなくても、


男として、友達としてずっと、高校が違っても一緒に居られたなら。


俺が本当に男だったら。


ずっとずっと、「馬鹿出来る仲のいい友達」だったかもしれないのに。