スタジアム巡礼 番外編:北広島ボールパーク構想を巡って | DESTRADEのブログ

スタジアム巡礼 番外編:北広島ボールパーク構想を巡って

日本では既存の屋根付きスタジアムは全てドーム球場。北広島市に新設されるという球場は屋根付きになるだろうが、これをドームと呼ぶ記事が散見される。概要図で三角屋根になることが公表されたので、それが減ることを期待する。

ドームは横から見て丸い屋根、おのずと上から見ても丸い球場になりがち。丸いのは外野フェンス側だけだから丸い建物に収めると、内野のファウル域が異様に広くなるのは当然。フットボールやコンサートなど多目的に利用できる、と謳うと野球場として欠陥が出るのも明らか。

それでもプロ野球空白の地にチームを根付かせるのに貢献したのが札幌ドーム。開幕戦から日本シリーズまで北海道で開催できることを「円山球場、スタルヒン球場といえば日没コールド」の時代に誰が予想できたか。

ファウル域やバックストップまでが広過ぎて、客席から遠すぎるだけでなく、野球の質も変わってしまいすぎる。この点を仮設席などで改善しながら、例えばW杯仕様だった当時の神戸ウイングスタジアムを大胆に改修してJリーグ仕様にしたように、永くファイターズとコンサドーレが同居できるようにしていくのだろうな、と思われた。

ただ、この札幌ドームという新居の大家たる市は、店子たるチームに対する傲慢が過ぎた。家賃が高い、リフォームしたいが認めてくれない、商売したらアガリを持って行かれる。なるほど、こんな物件なら出て行きたくもなる。

メジャーリーグではチームが転居をチラつかせて新球場を自治体に建てさせるケースが多いそうだ。そのため地方債を発行あるいは増税するので、住民にとってプロ野球チームの存在意義が異なる日本で同じようにできるかは疑問だ。

その日本では役所が屋根付きのものを建てるとき「多目的」にしたがる。この多目的は「無目的」だという正鵠を得た声もある。今回の北広島市が発表した構想は野球専用・非ドームであり、ファイターズ側からか、コンサルタントからか、進言が適切だったと評価したい。

その一方で入浴しながら観戦できる、あるいは入場しなくても観られる(チケットは客席への対価であり観戦への対価ではない、とする)構想などは実現すれば素晴らしいが慎重になってほしい。駅の新設、道路と駐車場の確保の後に取り組んでほしい。

宮城も今や遊園地の中に球場があるように感じられるが最初の数年は客席も3万人に満たない、日本シリーズ開催にケチがつくものだった。極端に言えば北広島での初年度は人工芝で仮設屋根、ごく普通の3万席が設置されて、また席のない「余白」があっても構わない。数年かけて完成させれば良いと思う。

最後に広すぎる札幌ドームのファウル域の真逆である最小限のものについて再考する。基準となる60フィート(約18.3m)とは、投手板から本塁までが18.44mなので、それと同程度の距離を一塁線と三塁線からの幅として内野ファウル域を設け、またバックストップまでの距離も揃えて四半円でつなぐと、客席を最もフィールドへ近づけられる。

この制限は内野にのみかかっているので一塁、三塁より外野側では観客が観やすい席を設置できる範囲でファウル域を狭くできる。てるてる坊主を逆にしたような「くびれ」があるフィールドの球場が最も観やすく、広島や神戸がこれに当たる。この辺りの図解は野球場の区画線規定に詳しい。

おダイヤモンドの対角線の交点から本塁までは約19.4mであるので、ざっとダイヤモンドを一回り大きくした(ダイヤモンドを4枚並べた)広さを超えたフィールドはファウル域が広すぎるということになる。