確かB-14だったな。俺は撮影に使った倉庫番号を確認しながら倉庫を探す。しかし同じ形の倉庫が多いため、見つけるのに時間がかかってしまった。探し始めること数分、目的の倉庫を発見した。扉にはB-14の番号が刻まれていた。
「はぁ・・・やっと見つかった・・・ダルい・・・」
俺は感想を愚痴ると、その扉をゆっくりと開けた。中は電気がついていないため、真っ暗だった。俺は手探りで電気のスイッチを探したが、見つからず、諦めることにした。目は暗闇に慣れたのか、先程よりはハッキリと見えるようになったのを狙って、俺は忘れ物を探す。しかし忘れた物が何なのか忘れてしまったので、そう簡単には見つからなかった。

「あれっ・・・おかしいな・・・俺の勘違いだったのか?」
それはそれで恥ずかしいなと思っていると、右手が何かに触れた。それは奇妙な感触がとても冷たかった。
「んっ・・・」
俺はすぐに右手の方を見ると何故か床の色が微妙に違うことに気付いた。それはどんどんと侵食していて・・・いや違う。これは流れている。ということは水か・・・俺はそう思いながら、何気なく右手を見る。と同時に月の光が照らした。掌は・・・真っ赤に侵食されていた。
「うわぁ!」
俺は叫びながら驚いた。きっとチョンやミシェルが今の姿を見たら、きっと大爆笑するだろう。しかしこんなものを見せたら誰だってこうなるだろう・・・俺は真っ赤になった手を近場にあった積まれていた段ボールで拭いた。弧を描いたそれは気持ち悪く、綺麗なものに見えた。きっと月の光で錯覚が生じたのだ。俺はゼェハァと息を吐きながら、落ち着こうと回りを見た。その行動は間違っていた。何故すぐに逃げなかったのか、何故忘れ物をしたと勘違いしたのだろう・・・どんだけ後悔しても遅かった・・・俺は見てしまった。


 床に置かれたそれは赤い液体をぶちまかし、それのパーツだったものが辺りに散らばっていた。そしてそれの顔は・・・恐怖を見たような顔をしていた。



「ギャーーー!?!?」
俺は絶叫をあげながら全速力で走り出した。足に痛みが生じようが、信号が赤だろうが家まで止まらずに走った。
「あらリー、お帰・・・」
オフクロが帰ってきた俺に挨拶をしたが、俺は何も答えずに自分の部屋に入り、布団の中に入った。体は震えていた。全速力で走ったのに、汗や疲れなど感じられなかった・・・その日はただ・・・布団の中でただ震えていた・・・




チーム合作小説
香港事変 怪奇編

「怪奇ファイル154 食人鬼」

 青年の姿は昨日と同じままだった。まさか一日中同じ場所で空をずっと眺めていたというのか・・・いや、今はそんなことを考えている時間はない。あたしはすぐにでも逃げ出そうとする。ふと青年の顔を見ると、何か驚いた顔をしていた。なぜそのような顔をしているのだろう・・・その時のあたしは逃げ出すより、そっちを優先して考えていた。しかしすぐに現実に戻される。

「あの・・・」

「はっ、はい!?」

突然青年が語りかけてきたのだ。あたしは驚いた。もしかしてユリが昔言っていた逆ナンというものに遭遇しているのだろうか?

「あなたは・・・四海 満智子さんですか?」

「えっ・・・」

えっ・・・何で・・・どうして・・・何で誰かも分からない人があたしの名前を知っているんだ?あたしは先ほどよりも恐怖し、ついに逃げ出した。

「あっ・・・待って!!」

青年は後ろの方で叫ぶが、あたしは気にせずそのまま走り続けた。走りながらも考えていた。なぜ彼はあたしの名前を知っていたのか?名前を・・・名前を・・・


 走り続けること数分、もともと体力があまりない方のあたしだから、すぐにへばってしまった。しかし先ほどの青年が走ってくる様子もなく、とりあえず安心した・・・かに見えた。

「見つけました。」

そのせりふを聞いたあたしはすぐに振り返った。そこにはあの青年が立っていたのだ。あたしは悲鳴のような叫び声をあげながら、鞄を青年をたたき、その場を去ろうとしたが、青年はあたしの腕をつかみ、それを阻止した。

「いやっ、離して!!」

「すいません、乱暴なまねはしたくないのですが・・・」

「じゃあ離してよ!!」

「えぇと・・・こういう時こういえば言いのでしょうか・・・四海 満智子さん、お茶しませんか?」

「へっ・・・!?

突然の発言にあたしは抵抗をやめた。これは…本当に・・・逆ナンをされてしまったのか?


KEEPOUT

 大学の授業が終了するチャイムが鳴ると同時に、多くの生徒が席を立ち教室から退室する。あたしは人が去るのを待つためにいすに座って待っていると、携帯が振動する。あたしはすぐに携帯を取り、確認すると・・・それはメールだった。メールの主は・・・あたしの妹だ。あたしは送り主が分かると同時に、そのメールを消去した。妹のことだ。家に帰ってこいみたいなメールか、自分の彼氏自慢のメールだろう。後者なら別に気にしないが、前者なら・・・大きなお世話だ。あたしは携帯をかばんに直すと、席に座ってるのはあたしだけだと気づいた。あたしはすぐに立ち上がり、教室を後にした。


 今日の授業は終了していたので、あたしは買い物をするために町を歩いていた。買い物・・・いや違う。さっきの妹からのメールを忘れるために歩いているだけかもしれない。あたしはカジュアルショップやファンシーショップを眺めたりしたが、これと言って欲しい物が見つからなかったので、すぐに店を後にした。時刻は午後三時三十分。あたしは昨日と同じように交差点を歩く。ほかの人達もあたしと同じように交差点を歩く。たまには知る人もいる気がするが、歩く人たちはそんなこと気にしていない。そんな気がした。あたしもその一人だ・・・

 あたしは突然人込みをかき分けながら走った。何故そんなことをしようと思ったのか・・・あたしもわからない。ただ走りたかった。それだけだ・・・しかしそんな行動を突然行ったのだから、誰かとぶつかった。


ドンッ、


軽い衝撃音とともにあたしは尻餅をつきそうになるが何とかこらえた。そしてぶつかった人に謝ろうとした。

「すいま・・・」

しかしそれは出来なかった。何故ならそのときのあたしは恐怖していたのだから・・・あたしがぶつかった人物・・・それは昨日空をずっと眺めていた青年だった。