節々が・・・いたい




ものすごくいたい・・・・ひどくいたい。




突如乱入してきた母が原因で暴行を加えられるという状況は
考えてみれば虐待の部類に入らないのだろうか?




そんな事を考えながら帰路に就く。




「そもそもあれよね、セイロンは」
そう言って、ミシェルは人差し指をこちらに向けて、リズムをとるようにしながら文句を言う。
「何にしても段取りが足りないのよ。ボクとしては、そう周りのことにもうちょっと配慮するってことを学んでもらった方がいいと思う。」
「いや、どう考えても、俺が一番周りに気をかけてると思うぞ」
「今回のことだって、セイロンのお母様にちゃ~んと説明してれば問題あなかったわけだし?」
そりゃ、どうだろうな?と思う。
何せ相手はあの母親だ。なんだかんだでトラブルになってたと思う。まぁ、冷静になってみれば勘違いした上での行動とはいえ、母のやったことは立派だ。普通、謎の黒服相手に腕に覚えがあるとはいえ挑みかかろうとは思わないだろう。
母の愛というやつだろうか?―単に暴力的な性格の母が主婦業という抑圧生活に耐えきれるはずもなく、暴発したというのが最も有力な説だが。
故に―今回のことで俺は母親を責めるつもりにはなれなかった。
問題なのは、俺が暴行に走るきっかけを作った我が朋友の方であろう。
ミシェルは母におべっかを使っただけだが、あいつは明らかに、すべての責任をこちらに向け、自分の安全を優先させた。
今頃家のベッドでむせび泣いていることだろう。
金的蹴り五連打で済ませたことは破格の待遇であるとは思うが・・・。
「ねぇ、聞いてる?」
ミシェルが俺の額に指をあてた。
「はいはい、俺が悪いよ。今度からは気をつける」
ま、ここはミシェルに合わせる方が無難だろう。そもそも、何に気をつければいいと言うんだ。
「聞いてないでしょ?そう言うところよ、セイロンは」
ああ、またこりゃ図星だ。超監督さんの眼光が鋭い。
しかし、そろそろ、俺としてもこの言われない罪による説教も聞き納めとしたい。
「だいたい、お前は何で俺と一緒に帰ってんだよ。お前の家、こっちじゃないだろ?」
まだまだ、まくしたてようとするミシェルに割って入って俺はお声を上げた。
「な・・・あ、あうあ・・・・」
なんで、そこで黙る?
ミシェルは、少し俯いて・・・・。
ああ、この展開は怒るな―なんで怒るかはわかんないが。
「そ、そんなの決まってるじゃない!こ、今回のことでの愚痴がたくさんあるわけよ!だって折角の文化祭の映画、これでおじゃんになるかもしれないのよ!そしたら何?あれだけ集めたスタッフのほとんどが怪我しちゃったわけよ?みんなもう謹んでお断りしてくるに決まってるじゃない?どうすんの文化祭!」
まぁ、・・・・それはそうか?
ミシェルの勝手気ままに振り回されて映画を撮ってはいるが、逆に言えば、今回の文化祭の出し物は全てミシェルに頼りきっているとも言える。
こいつはこいつなりに―あるのかないのかよくわからない責任感―というのを感じていたんだろう。


「それに役者の一人も怪我しちゃって・・・帰り道でなんかあったら危ないじゃない・・・・」


「なんか言った?」
「なんでもないわよ!」
ふん、とそっぽ向くミシェル。こういうこどもっぽいところが抜けると、こいつもシエラさんみたいになるんだろうか―いや、ない。それはないな。




「俺の家、この辺だからここで別れようぜ?」
「うん、じゃあね」


路地を振り返り今までとは逆方向に帰っていくミシェル。


「おまえ、この辺気をつけろよ?」
「誰に物言ってんのよ?ボクはセイロンと違ってそんな間抜けじゃないわよ」


そんな憎まれ口を叩いてミシェルは帰って行った。



次へ→