正直小羽が怖いと感じることがある。普段はノホホンとしているが、幸せとか幸福とかの場面を見る時、まるでゴミを見ているような感じがするからだ。彼女は幸福と言う感情が欠落している。俺の勘ではそう告げているが、俺は信じられなかった。俺はその考えを忘れるために頭を振って、小羽を見る。小羽はまだケントとアケミの後ろ姿を見ていた。しかし目付きが不思議だった。もういない二人が残した幸福の粉を探しているような目をしていた。メルヘンチックなことを言うのはこれぐらいにして・・・俺は小羽に言った。
「それじゃあ俺達も帰りますか」
「はいです!」
そう言って、小羽は俺に何時もの笑顔を見せた。
事務所に着くと、血糊と麻里亞が出迎えてくれた。
「お帰り、マウスさん」
「何処行ってたの?あっ小羽ちゃん。久々だね」
「はいです。お久しぶりです麻里亞さん、血糊さん」
「まったく今日は疲れたよ」
俺はそう言って小羽の鞄から飛び降り、床に着地して、その足でテーブルの上をかけ上がった。
「そういえば先程霧宮さんからお電話がありましたよ」
「あぅ~、お仕事を忘れてました。瑠璃社長のお怒りが怖いです」
「まぁ電話越しではそこまでお怒りじゃありませんでしたよ」
「なら良かったですぅ・・・」
「電話の内容ですけど、頼んだ物は明日持って来い!だそうです」
「血糊君・・・それは怒ってるんじゃ・・・」
「はぅ~明日が怖いです」
小羽はブルブルと震えている。
「それと春咲さんの両親に電話をしてあげなさいとのことです」
「そういえばお父さんとお母さんに遅くなることを言ってなかったです・・・どっどうしよう・・・」
「電話したらいいだろ?」
「そうだね。それに時間も時間だし今日は泊まりなよ」
「えっ・・・でも・・・」
「大丈夫、麻里亞が小羽ちゃんを守るからさ!」
麻里亞は何から小羽を守るのだろう・・・不思議に思ったが、あえて突っ込まないことにした。
「分かりました。お父さんとお母さんに連絡します」
小羽はそう言うと血糊の机にある黒電話を使って両親に連絡する。どうやら今日の夕飯は騒がしいことになりそうだな・・・ふと俺は時計を見る。時刻は午後八時になるところだった。もしケントがアケミに会えず、小羽にも会わなかったら・・・あの子はまだ待ち続けていただろう。雨にうたれようが、暗い闇の中だろうが・・・もしかして小羽はケントの命を救ったのか?
まさかな・・・俺はその考えを心の奥底に封印し、香ばしい臭いを嗅ぎながら、今晩の食事を待つことにした・・・
おわり
次の話へ続く・・・