人間いや生き物はよく落とし物をする。俺達ネズミだって落とし物をする。食べ物を口にくわえたのはいいが、気がついたら口から落ちていた・・・そんなことはよくあることだ。 だが人間が一番落とし物をするだろう。ポケットに財布を入れていて、気がついたらポケットに穴が開いていて、落ちていた。そんなことを起こす生き物だ。人間とは・・・

 さて今回の話はそんな落とし物に関する話だ。まぁ落とした物は日常にある物じゃないけどな・・・




 それは真夏日の気温に突入した八月の土曜日だった。俺はクーラーが聞いた事務所のテーブルでゴロゴロしていた。血糊はソファに座り、何やら熱心にスケッチブックに何かを書いていた。血糊の趣味は絵を書くことで、こうして時間があればスケッチブックに何かを書く。ただそれがうまければ良いのだが、血糊の絵はすごいを通り越して、未確認物体の類いに等しい。この絵の素晴らしさはきっと何世紀先にならないと分からないだろう。まぁ俺はその凄さを実感するころにはきっとあの世に行ってるだろうな・・・
 まあそれはさておき、土曜日は休みにしてるせいか、俺はテーブルでゴロゴロ転がり、そのまま昼寝でもしようと思っていた。
カランカラン、
突然のドアベルに俺は驚き、そのままテーブルに落ちた。血糊はスケッチブックを机に置き、いつもの挨拶をしようとした。しかし扉を開けて入ってきたのは麻里亞だった。しかし麻里亞の格好が普段とは違うことに気付いた。
「河瀬さん、その格好は?」
血糊が尋ねると、麻里亞はニコニコしながら説明を始めた。
「浴衣だよ。浴衣!」
「浴衣・・・お正月に着る服のことですよね?」
「それは春着だよ。これはね夏のイベント何かに着る服なの。どう似合ってる?」
「お似合いですよ」
「本当、嬉しいな!!」
麻里亞はそう言うと、上機嫌にそのばでくるくると回転する。確かに麻里亞が着ている浴衣は綺麗だった。模様は青色のアサガオ、金魚の模様がついた巾着も明るい麻里亞にはピッタリだった。
「その浴衣は麻里亞のか?」
「うん、前に本当の叔父かね買ってくれたの・・・ただ見る前に亡くなったけどね・・・」
「・・・」
俺は言葉を聞き、沈黙していると、麻里亞は巾着をテーブルに置き、血糊の隣に座る。そして血糊がスケッチブックに書いていた絵を見て、血糊に尋ねた
「血糊くん、これは・・・何?」
「マウスさんです。マウスさんはモデルにしてるのが分かってるみたいで、ジッとしてくれなくて大変です」
「そっ・・・そう何だ・・・」
麻里亞はそう言って、それ以降絵の話題に触れなかった。麻里亞・・・俺はその絵のモデルとして恥ずかしいよ・・・
「ところで河瀬さん、何故そのような格好を?」
「えっ・・・まさか血糊くん知らないの?」
「知らないって何が?」
「マウスも・・・もうこれだからお仕事一本の人は困る」
麻里亞はそう言ってため息をついた後、テーブルを叩いて、こう言った。
「今日は大阪名物、淀川花火大会だよ」