ここには何もない・・・


空も海も植物も動物も、そして人間もいない。


命あるものは存在しない空間。ただ存在しているのは永遠の闇・・・


その闇に私はいた。なぜその闇に私という存在があるのかわからなかったが、私は闇の中をただ茫然と眺めてるしかなかった。いやそれしかできなかった。


その闇に奇妙な音が響いた。それは靴の音、


コツコツコツ、コツコツコツ


靴の音は周りを探索しているように、その空間全体に響き渡った。


やがて靴の音は止み、突然その音の主が姿を現した。


そのものは奇妙としか言えなかった。


二つの鈴が付いた帽子。カラフルな色が施された格好。靴の先は奇妙に曲がっていた。そして・・・顔には仮面をつけていた。そうまるで道化師と呼ばれる存在だ。


そのものは突然私のほうを見た。まるで私がそこにいるかのように・・・

そしてそのものは語りかけてきた。


「どうやらこの空間・・・世界で生命として生き残っているのは私とあなただけのようですね・・・・」


生命・・・私がか?私はそう思ったがそう告げることはできなかった。何故なら私は何もない無なのだから・・・


「これも何かの縁です。語り合いませんか?」


語り合う?何を語るというのだ?私のそう直な気持ちだ。するとその気持ちが伝わったのか、道化師は杖をくるくる回転させながら地面に座る。いや地面なんてないのだから・・・いや今はそんなことを気にする必要はないか・・・


「私はいろいろ知ってますよ。この空間の誕生から滅亡まですべてをね・・・」


その言葉には正直驚いた。誕生から滅亡・・・それは知りたい。なぜ私はこの空間にいるのか・・・その話を聞いたらもしかしたら知れるかもしれない・・・


「どうやら納得してくれたそうですね」


道化師はそういうと、杖を自分の横に置き、大げさな動作で語り始めた。


「それでは語りましょう。どこから語ろうか・・・・この物語はとても大きいですからね」