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pontaの街場放浪記

さすらいの街場詩人pontaのライフスタイル備忘録です。
2012年に広島のリージョナル情報誌『旬遊 HIROSHIMA』のWebページでコラムを連載しました。その過去ログもこちらへ転載しています。

アユート玄関

2012年9月9日。

「広島一予約の取れない店」として有名なイタリア料理レストラン〔アユート!(La Cucina Itariana AIUTO!)〕移転前の最終営業日だ。

アユート看板

広島の、いや県内外を問わず多くの方々に愛され続けた〔アユート!〕。

今まで何度も訪問することを試みたが、当然のごとく予約至難。その結果一度も訪問することが叶わなかった。

奇遇にも「〔アユート!〕に一度は訪問しましょうよ」と知人に誘って頂き、移転の数日前に遅まきながら初めて訪問することができた。まさに僥倖としか言いようがない。

清潔なオープンキッチンで腕をふるう村井宏治シェフを目の前に、お料理を頂くことができた。

アユート厨房

調理の手さばきも躍動感があり、ライヴ感満点だった。

前菜のうちの一皿「サンマのテリーヌと鴨の燻製 香味野菜添え」。

アユート1

和の素材を用いた〔アユート!〕らしい前菜の「鱧と黒米と海ぶどうのサラダ仕立て」。

アユート2

パスタのジャストな茹で加減が抜群な「穴子の燻製と水菜のタリオリーニ」。

アユート3

そして、ニョッキ好きとしては何とも嬉しい「じゃがいものニョッキ アワビのクリームソース」。

アユート4


〔アユート!〕の素晴らしさについては、既に『旬遊』他の雑誌媒体やブログなどでお店の常連の方々が語り尽くされているので、そちらをご参照頂ければ幸いである。

一見の僕が「屋上屋を架す」ことは必要無いかな、と。

それではあまりにも芸がないので、何か一言申し上げるとすれば・・・。

オーナーシェフの村井宏治さんと奥様の直子さんのホスピタリティが抜群に素晴らしかったこと。

そして、ピカピカに磨き抜かれたオープンキッチンに勝るとも劣らない、村井シェフの澄んだまなざしの美しさ。

これらが最も強く印象に残った。

村井シェフの人柄に惚れ、「また彼の料理を食べに来よう」と熱望するゲストが多くおられるからこそ、〔アユート!〕の不動の人気は支えられてきたのだと思う。

僕ももっと以前に〔アユート!〕に伺う機会があれば、ご夫婦の人柄に惚れて、足繁く通い詰めたかも知れない。いや、きっと通い詰めたはずだ。

〔アユート!〕を愛してやまない常連客の方々は、村井さんご夫妻の新境地を味わいに、遠路を厭わず新店舗を訪問するだろう。


今日の一曲は、僕も〔アユート!〕に愛をこめて。

吉田拓郎「聖なる場所に祝福を」

吉田拓郎

この曲は、「吉田拓郎&かぐや姫 コンサートinつま恋2006」のラストナンバーとして知られている。

「今、この魂のすべてを燃やしたこの時に祝福を
 聖なる場所に祝福を」(作詞:岡本おさみ)

〔アユート!〕を愛した熱烈なファンたち、そして、僕のように一度しか訪れたことがない者たち。

皆が〔アユート!〕への祝福の気持ちで心が満たされているはずだ。


(追記)今回のブログは、『WEB旬遊』の尊敬する先達である「ヴォクソール」さんのブログへのオマージュです。


(2012年9月9日執筆。「Web旬遊」所収)
先日、旧知の友人が営んでいる居酒屋〔自彩菜酒処 渓〕で友人と飲んでいた。

ご主人の加島さん(というより「ごんべさん」と言った方が有名かも)の気さくな雰囲気、こだわりの日本酒の品揃え、そして奥様手作りのおばんざいの美味しさが人気のお店だ。

燗酒と肴に舌鼓を打っていると、加島さんから突然声がかかった。日本酒とチーズのイベントへのお誘いだった。

「pontaさん、とっても良いイベントじゃけん、来てみんさい」。

なんと、竹原〔竹鶴酒造〕の日本酒と、広島・京橋〔フロマジュリー・ピノ〕のチーズ、そして〔自彩菜酒処 渓〕のお料理を共に頂けるイベントとのこと。

コク深い〔竹鶴酒造〕の日本酒と、チーズやお料理とのコラボレーション。それは行かなくてはなるまい!と思い、イベントに参加することにした。

当日〔自彩菜酒処 渓〕は、イベントのための貸切営業だった。

ゲストも続々登場した。

〔竹鶴酒造〕の竹鶴壽夫社長と「酒ゴジラ」こと石川達也杜氏。

〔フロマジュリー・ピノ〕の「ゴローさん」こと木村店長。

そして、現在休業中の広島・堀越の〔ブランジェリー・ドリアン〕の田村夫妻。

飲食に命を賭けたサムライたちが一堂に会した。

当日は〔竹鶴酒造〕より、3種類の日本酒を燗酒で。

(「秘傳 竹鶴」、「小笹屋竹鶴 大和雄町純米原酒 21BY」、「小笹屋竹鶴 生もと純米原酒 21BY」)

竹鶴

〔フロマジュリー・ピノ〕からは、5種類のチーズを。

(イタリアの「パルミジャーノ・レッジャーノ」、スイスの「テッド・ド・モワンヌ」、フランスの「ガレ・ド・ラ・ロワール」、フランスの「コンテ16ケ月熟成」、イタリアの「スカモルツァ・アフミカータ」)

チーズ1

チーズ2

チーズ3

そして〔自彩菜酒処 渓〕からは、野菜たっぷりのおばんざいを。

コクのある〔竹鶴酒造〕の燗酒と、〔フロマジュリー・ピノ〕の厳選チーズとの相性は、抜群。

日本酒のコクとチーズのコクが、口の中で乗数的に旨みを増してくれる。

また〔自彩菜酒処 渓〕の野菜料理は、自家菜園で栽培されているものなので、野菜の旨みにあふれ、こちらも燗酒にピッタリ。

飲食に命を賭けたサムライたちと、日本酒ファンが集ったイベント。

何ともリラックスした雰囲気で、とても居心地が良かった。

飲食に命を賭けたサムライたちは、肩に力が入っておらず、自然体。

モノづくりに注力しておられるので、余計な虚飾や気取りやハッタリをする必要がないから、肩に力が入らないのかな?と感じた。

だから、一緒に場を共有しているこちらまで、自然と肩の力が抜けてくる。何とも心地良い。

日本酒も、チーズも、おばんざいも良いに決まっているけど、それ以上に、この日の会はとても心地良かった。こんなに心地良い感覚を覚えたのは、本当に久しぶりだ。

そんな〔竹鶴酒造〕の石川杜氏と、〔ブランジェリー・ドリアン〕の田村さんの会話が、知らず知らずこちらに聞こえてきた。それは、とても興味深いお話だった。

田村さんと石川杜氏

「いい酒を飲むと、お腹が空いて、誰かと話したくなる。たまにはちょっとエッチな気分にもなる。生命が活動しはじめる。活きる力が湧いて来る!そんなお酒です」

そうそう!飲食とは、他より生命力を頂く崇高な行為。

〔竹鶴酒造〕の日本酒は、頂くと生命力が沸き出てくるような、武骨だけどコクが深い味わい。生命力にあふれていた。

僕も今回のイベントに参加し、生命が活動しはじめ、活きる力が沸いてきたようだ。


※2015年9月現在〔ブランジェリー・ドリアン〕は営業中です。


(2012年7月18日執筆。「Web旬遊」所収)
ビールが美味しい季節になった。

夏の黄昏時にグラスを傾け、冷えたビールの喉越しを楽しむ瞬間がたまらない。この一瞬のために、日中必死で頑張っているんだなあと感じるのは、サラリーマンのささやかな愉楽だと思う。

先日、仕事が早く終わった日に、冷えたビールの喉越しを味わいたくて、広島・銀山町の〔ビールスタンド重富〕へ向かった。

〔ビールスタンド重富〕は、今月開店したばかり。酒店の一角で美味しい生ビールを提供するという。

営業は午後5時から午後7時の2時間のみ。つまみも出ず、しかも立ち飲み。ビールは1人2杯しか提供しない。ある意味ハードルが高いお店だと思う。

ではなぜこのような営業形態にしたのだろうか?

マスターである重富酒店の重富社長によると、「つまみなしでビールを美味しく飲める限界が2杯。その後、美味しい料理が出るお店に行って、食事と共にお酒を楽しんで欲しい」から。

〔ビールスタンド重富〕では、旨い生ビールの喉越しを楽しむことに専念するしかないのだ。何とも潔い。

〔ビールスタンド重富〕の扉を開けると、何ともレトロなビールサーバーが鎮座していた。

1

聞くと、戦前に用いられていたビールサーバーだとのこと。もちろん、電気で冷やす現在の方式ではなく、氷冷式である。氷でビア樽を冷やすので、冷えすぎずビールを美味しく飲むための適温になるのである。

生ビールは、重富社長自らに注いで頂ける。

2

注ぎ方は「壱度注ぎ」「弐度注ぎ」「参度注ぎ」「重富注ぎ」の計4種類。

3

注ぎ方によって、ビールの味が明らかに変わるのだ。こればかりは、文章で説明するのは難しい。炎天下を歩いた後、喉をからからにして味わって頂いて初めて分かる美味しさだと思うからだ。

長らく安芸郡府中町にビール工場があったためか、広島はもともとビール人気が高い街ではあったが、このところ、広島のビール事情はますます活気を帯びている。

地元発信でビールの魅力を広めようとする〔ビールスタンド重富〕以外にも、大手ビールメーカーにより先月期間限定でオープンした〔一番搾り フローズンガーデン〕が人気である。

また、ベルギービールや日本の地ビールを供する専門店〔ゴールデンガーデン〕や〔ラクビア〕の人気は、既に定着している。


ここ数日で、ビールの美味しさについて驚きや納得を得ることができた。

また、夏が終わるまでに数十杯?の美味しい生ビールを満喫することができそうだ。

根っからのビール好きにとって、広島がより一層「ビールの美味しい街」になることは、本当に嬉しい限りである。

※〔一番搾り フローズンガーデン〕は、2015年現在営業されておりません。


(2012年7月6日執筆。「Web旬遊」所収)