某放送局のチャリティー・イベントに出演するためだ。
名曲「スローなブギにしてくれ」を聴きたいから行ったし、もちろん感動したんだけど、面白いなあと思った演奏はビリー・ジョエルのカバー曲"Just the way you are(素顔のままで)"
予算の関係かどうか知らないけど、今回の演奏は南さんのギター弾き語り。
南さんの指が弾でるギターの響きは、親指が一定のテンポをキープし、他の指はシンコベーションのリズムを刻んでいた。
なるほど。「素顔のままで」はボサノヴァのリズムを取り入れた曲なんだなあと言うことを、いまさらながら強く感じた一夜になった。
クリスマス・イヴに讃美歌を聴くのも良いが、ボッサのリズムに身を委ねるのも、快かった。
この曲でビリーは言ってる。「きみがいつまでも 昔のままでいてくれたら それでいいのさ」(山本安見訳)って。
中学生の頃、初めてこの曲を聴いた時は「良い歌詞だなあ」って思ったものだけど、今は違う。
人も、世の中も、考え方も変わる。
ダーウィンが言ったとか言わないとか「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」。
ボブ・ディランも言ってる。「時代は変わる」って。
3.11を契機に、日本人は様々なことに気づき、うろたえたり悲しんだり怒ったりしたと思う。
もちろん、それも必要なことなんだけど。
ビリーと一緒にしばらく懐旧の情にふけった後は、僕はダーウィンやボブ・ディランと一緒に自分と外界をブレイクスルーしていきたいと思う。

本家ビリー・ジョエル「素顔のままで」(アルバム『ストレンジャー』収録)も、南佳孝のカバーほどボサノヴァっぽくないものの、ボッサの軽快なリズムが心地よいミディアム・スローのナンバーだ。
演奏はボッサのリズムを前面に押し出したものでなく、ニューヨークの都会的な雰囲気を味わうことができるシンプルで洗練されたアレンジだ。
フュージョンバンド「スタッフ」に在籍したリチャード・ティーのメロウなフェンダーローズ(エレクトリック・ピアノ)の音色。
そして、名サックス奏者であるフィル・ウッズの情熱的なアルトサックス。
アレンジャーのフィル・ラモーンの手によって、心地良いボッサ風リズムの名曲に、メロウかつ情熱的な息吹が吹き込まれ、世界的なヒット曲と化したのだろう。
アレンジャーの仕事とは、手を触れたものを全て黄金にするミダス王のようなものなんだなあと、この曲を聴くたびしみじみ感じざるをえない。