2年目のブーゲンビリアの花![]()
強ければ、
こうして、
冬を越して、
また、
太陽の下で枝を広げられるんだ。
このお話は、
私のデパート勤務時代の、
忘れられない、
「悲しくて、切ない記憶」 です。
私が勤務していた、
薄暗い照明の、赤いカーペットの、海外ブランド専門の、
そんなフロアには、
平日、ほとんど、お客様はいらっしゃいません。
その日は、ショップの店長さんがお休みで、
私が一人でお店番をしていました。
ショップの中央に陳列棚があり、
その横に立って、お客様をお待ちしていた時のこと。
ショップから、まっすぐの位置に、階段への出入口があるのですが、
そこから、一人の男の人がフロアに入ってきました。
30代前半くらいかな。
ごくごく普通の人です。
何となく見ていると、
その人・・・踊り始めました。
正確には、
両手を横に広げながら、
歩きながら、フラフラと踊っています。
私は、
ちょっと、びっくりしましたが、
そこは、若かりし頃の悪いところ、
きっと、私の存在に気がついていないから、
そうしているんだろう、と、
黙って見ていることにしました。
私、いじわるですよね。
私の存在に気がついたら、
踊るのを、もしくは、歩くのを、
止めるはず。
そうしたら、
お客様を迎える笑顔で、
ニッコリ
挨拶しよう。
そんなつもりで、見ていました。
ところが、その人は、
私の存在に気がついたはずなのに、
踊るのを止めない。
それどころか、
こちらに向かって歩いてくる。
もちろん、
踊りながら。
これは、マズイ。
危機感を覚えながらも、
そこは、お客様だもの、
それに、
周りには、他の店員さん達がいるし、
広いフロアだから、
何かあったら、他に逃げればいい。
その人、
まっすぐ、私のほうを見ながら、
ショップ内に入ってきました。
「・・・いらっしゃいませ」
私、
動揺していない素振りで、
めいっぱいの笑顔・・・のつもり。
その人、
着ていたジャケットをお客様用のイスに掛けて、
「ねえ、お水ちょうだい」
自分もイスに腰かけながら、
とても、軽快な口調で言いました。
どうしようか?
誰か、呼んだほうがいいかな・・・
「お客様、申し訳ございませんが・・・」
ここは、喫茶室ではないので、お水は出せない、
そして、同じフロアに喫茶室があるし、
それに、上の階にはレストラン街もある、
ということを説明いたしました。
そんなやりとりを、しばらくしていたら、
その人、
怒ったわけではないけれど、
不意に立ち上がり、
どこかへ行ってしまった。
イスにジャケットを残したまま。
私の判断だけで、ジャケットに触ることはできない。
お客様の物だから。
上司を呼び、事情を説明し、
デパートの警備の人に来てもらい、
ジャケットを渡した。
その後、
ジャケットの中に入っていた物を頼りに、
その人のご家族と連絡が取れたらしい。
ショップに、ご両親がおいでになり、
どんな状態だったのか、
何をして、何を話したのか、
私に聞きたいと言う。
私は、
見ていたことを、最初から話し始めた。
話が終わらないうちに、
「もういい、もういいです・・・」
お母様は泣き始めてしまった・・・
後日、聞いた話。
その人は、
とても真面目で、
とても頑張り屋さんで、
小学校の先生になられたのだそうです。
そして、
頑張り過ぎて、頑張り過ぎて、
心 を 病んでしまったのだそうです。
私が、その人に会ったのは、
その一度だけ。
その後、どうされたのかも分かりません。
心 を 病む ということ、
現代の、
このストレス社会では、
珍しいことではないと思われます。
心 が弱いから?
いえ、
何かのきっかけで、
強かったはずの 心 も、
もろいものに変わります。
そうなる前に、
吐き出せるものは吐き出し、
なるべく、なるべく、
心 を
軽い状態にしていてください。
・・・あの時の、
「その人」 の、お母さまの涙。
今、
息子を持つ母になって、
痛いほど、分かるのです。
冬を越せば、
必ず、春は来る。夏も来る。
そうすれば、また、花は咲きますよ。
心 を 軽くして、
たくさんの日の光を浴びましょうよ
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