白いシャツ | Commentarii de AKB Ameba版

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 白いシャツを買った。

 白いシャツなんて、何年ぶりだろう。いや法事を除いたら、何十年ぶりだ。
 今ある手持ちのシャツは、全て色柄物。基本はブルーやピンク、オックスフォード地のボタンダウンシャツ。ピンストライプが少々。濃いグリーン地に紋章をあしらった派手なヤツやちっちゃなフラダンサーと椰子の木柄を散らしたボタンダウンだって持ってる。
 でも白いシャツは、ない。

 似合わねえだろうなあ、白いシャツ。
 いや違うんだよ、似合わないんじゃなくて、見慣れないだけ。見慣れりゃいけるよ。うん。
 ・・・
 やっぱ似合わねえ。

 そういや就職するとき、K君の元彼女から白いオックスフォードのボタンダウンを貰ったっけ。
 「もう社会人なんだから変なカッコはしないでよ」って言われて。
 確かに変なカッコしてたもんなあ、学生時代。ヴィヴィアン・ウエストウッドがまだとんがってた頃。「流行通信」がカッコイイ雑誌だった頃。もちろんWorld’s Endで買う金なんかなかったから、古着を自分でちぎって縁を焦がして、裏返しにして着たりして。プアルックってゆったんだよ。
 うひゃあ今から思うと恥ずかしいぞ。え、バブルよかずっと前だぜ。若い子は何でもバブルの話だと思っちゃうけど。

 変なカッコしてK君や、まだ K君とつき合ってた彼女や、みんなと毎日遊んでた。
 ケイタイもポケベルも無い頃。誰かに何かを伝えるためには、手紙を書いた。便箋を選んでペンを選んでインクの色を選んで。

 何にも伝わってなくても、夜になるとみんないつもの店に集まってた頃。

 仕事が始まって、白いシャツにレジメンタルタイを締めて、だんだんみんなと遊ばなくなって、K君がいなくなって、彼女が後輩と結婚して。

 うわっ変なところの蓋が開いていろんなモノが出てきたぞ。ヤバイヤバイ。
 
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 あの白いシャツ、どこへやったんだろう。
 みんな、どこ行っちゃったんだろう。
 
 いつの間にか白いシャツは着なくなったけど、オックスフォードのボタンダウンシャツを選ぶ習慣だけが残った。今やもう「ピンクが似合いますね」なんておべんちゃら言われてニコリともしない厚顔無恥なおっさんだ。

  白いシャツ着よう!/まっさらな気持ちで

 うん、白いシャツ着て行こう。君たちがそう言うのなら。

 ちょっと似合わないけど。
 ちょっと気恥ずかしいけどさ。

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 というわけで、2013年4月10日、僕は買ったばかりのオックスフォードの白いボタンダウンシャツを着て、シアターに行ってきました。ヴィヴィアンのタイを締めて。

 AKB48研究生公演「パジャマドライブ」。
 こんなに早く呼んで貰えるとは思わなかった。

 ありがとう、光宗大明神。身が裂けんばかりに君が苦しんだ残酷な季節がまた近づいて来たけど、君の13期は大丈夫だ。

 ありがとう、峯岸坊主観世音菩薩。よくぞ立ってくれた。黙ってやり過ごしてほとぼりを冷ますこともできたけど、そんなのはAKBじゃないやい。

 そしてありがとう、なっちゃん。君にもう一度会えることが、心底嬉しい。今夜はかつて君が心血を注いだ「パジャマドライブ」。演じた後輩たちは一心不乱だった。きっとなっちゃん、君たちもそうだったんだよね。

 16時30分シアター着。

 まずはいつもの通り研究生の箱にお賽銭。
 「一日も早い復興と、研究生諸君の夢がかなうことを祈念して」。
 ね。大人らしく邪念無しのメッセージを添えて。

 最近は投入前に係の人の方を見て、「はい、これから入れますよ-」って顔するの。ちょっと催促してるみたいでイヤラシイんだけどさ。てか催促してますけど何か?
 で、貰ったのがでっかいステッカー。デザインは同じだけど、新しく作ったんだね。ちょっとびっくり。

 いつも通りお賽銭箱の写真を撮ろうとして、こんだどんなアングルにしようかな、と思って見回してたら、ひっそりと飾られてあったのがこれ。

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 岩手県山田町の児童からAKBに送られた手書きの感謝状。

 親愛なる研究生諸君。
 君たちもいつか是非行って来ておくれ。
 軽やかなステップで、こども達を励ましてきておくれ。口ばかりで腰の重い僕ら大人たちの代わりに。

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 いったんビルを出て時間を潰して、白いシャツに着替えて抽選を待つ。
 タキシードを着た外人さんが5人、通訳を連れてVIP入場。
 もうね、抽選なんかどうでもいいのここに来られたら。とは言うモノの、後ろから2番目になるくらいだったら「優勝」したかったよね。
 立ち見正面3列目、幸い前の人は僕より背が小さくて、何とか左目で視界を確保。
 「優勝」のレーンのお客が入ったその後で、似合わないスーツ姿の若い男女が数人入場。立ち見エリアの後ろの通路に案内されてた。どっかの企業の新入社員が見学に来た感じ。
 
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 暗闇に浮かぶ円陣。
 そしてついに始まった、僕の「初日」。

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 岩立。
 みんなさあ、「天使のしっぽ」で小嶋ばっか見てるでしょ。または篠崎。
 まこちゃんあやなんカワイイカワイイって。
 うん、確かにこじまこあやなんカワイイさ。でもねえ、今日気づいちゃったんだけどねえ、みんなの目が小嶋篠崎に行ってるスキにね、岩立はねえ、カワイイ表情に時々ちょろっとエロをまぶして来るんだよ。
 自分のパートじゃやらないの。そういう歌じゃないから。
 自分で歌う時は「カワイイカワイイ」で通してるんだけど、お客が「まーこちゃん」とか「あーやなん」って言ってる時にねえ、あたしのことだけじっと見ててくれる人だけに、特別サービスの表情をちらっと見せてくれるの。
 え? と思って見てると、「べつにー」ってお澄ましなの。
 こらっ。そういうことすると目が離せなくなっちゃうでしょ。
 こういうのちっちゃいお嬢ちゃんにはできないよね。さすが女子大生。軽くやられちゃいました。

 相笠。
 僕はずっと相笠をさっさと昇格させるべきだと言ってきた。でないと宝の持ち腐れになってしまうんじゃないかと危惧してきた。正規メンバー、たとえば石田(安)や松井Jなどと競いあう環境の中でないと、彼女のパフォーマンスが生きてこないんじゃないか、と。
 だって「僕の太陽」では、彼女は埋没してたんだもの。うまいけど「目撃者」公演で見せたような、正規メンバーの先輩から力ずくで客の視線を奪うような、はっと息を呑むような瞬間が見られなかったんだもの。周りにあわせてセーブしているみたいに。
 でも今日は、彼女が研究生でいてくれてよかったと思った。
 「純情主義」での3人。相笠だけじゃなく平田村山がいいんだ。
 特に村山。
 正直今まであんまり印象的ではなかった村山が別人のようにすっごくかっこよかった。
 でね、これってたぶん相笠の影響なんだと思う。
 「僕の太陽」では、相笠が周りにあわせてる感があった。でもこのステージでは、平田村山が相笠のレベルに近づこうとしてる。相笠がそれを引っ張っり上げてる。そう感じた。
 「純情主義」って言ったら「高速ターン」(個人的には「相笠ターン」と呼びたいけど)じゃん? 3人揃ってのターンが、どんどん揃って決まって行く感じなんだよね。
 びしっ、びしって。こういうのって見ててしびれるよね。
 平田だっていいよ。
 今夜のステージじゃあんまりターンが高速なもんで、村山の帽子が飛んじゃったんだよ。どうすんのかな、と思ったら、曲の後、平田がハケルる時にすっと拾ってった。曲の余韻と緊張感を保ったまま、その所作がまるで曲のフリの続きであるかのように、かっこよく。
 意識の高さだよね、これって。
 もちろんヒラリーは昔っからこういう子だけどさ、このユニットを得て魅力バクハツだと思った。

 佐々木。
 「ヒグラシ」の白と「晴れが苦手な少女」はゆかるんで決まり。
 イメージ先行と言われればそれまでだけど。だって条件が十分に整うと、結構なジャンプを見せてはっちゃけることもあるんだよね、ゆかるん。

 岡田(奈)。
 この人、ホント言ってちょっと苦手意識がありました。
 取っつきにくいというか、本人も自覚しているように「笑顔が苦手」でしょ、彼女。僕はどうしても西野のヒマワリのような笑顔に惹かれてしまうんですね。
 それに人気先行の感じがしちゃって。
 でもねえ、夕べのこの人はカッコよかった。
 特に後半「Two years later」から「命の使い道」は完全に彼女の独壇場だった。髪振り乱して鬼気迫ると言ってもいいくらい。
 西野も頑張ってたんだよ、きりっとした表情で。でもどうしても岡田(奈)に目が行ってしまう。
 「命」の最後なんか、ホント抜け殻に見えて心配になっちゃった。それが「キスして損しちゃった」に入った途端、魂が吹き込まれたようになってほっとしたくらい。虚ろだった目に明かりが灯ってふっと笑顔になって、小さな花が咲いた。
 そういや「咲く」と「笑う」とは同じ事だったんだよね。
 花は必ず咲くから、無理に笑顔作らなくていいよね。

 茂木ちゃん。
 僕は彼女が研究生の中でイチバンべっぴんさんだと思うのだが、それはすでにハートをもっぎもぎされている証拠なんだろうか。
 あれだけ接触を求めていながら、リアルでは「ぼっち」。
 そんな彼女に旗を持たせてセンターに立たせてみたい。その姿はどんなに凛々しいだろうことか。
 「誰もがJeanne d'Arcになれる」って秋元先生、それって火焙りの運命もコミなんですか?
 まあ余談だ。

 MCは相変わらずぐだぐだ。
 別にお話の達人を見に来ているわけじゃないんだからいいんだけど。
 達人峯岸先生をしても、どうにもならない感じ。もっとも先生ご自身も道に迷っておられるご様子で。
 仕方あるまい。時あたかも「最も残酷な月」なのだから。
 そんな中、異彩を放ったのは髙島嬢。先生をして「たかみなと同じ匂いがする」と言わしめたのはお手柄。