転がる石になれ | Commentarii de AKB Ameba版

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 K2公演も大詰め。アンコール2曲目は、Team Kのアンセムとして今も歌い継がれるこの歌。

 当時のことを肌で知らない僕がこんなことを書くのはなんなんだけどさ、Team Kの船出は、決して全てがハッピーだったわけではなくて、いつも前を行くTeam Aの影と戦ってなきゃならなかったみたい。

 いわく「2軍」。
 いわく「劣化コピー」。

はじめにTeam Aありき。
 Team Aは秋元康と共にありき。
Team Aは秋元であった。

 これらを跳ね返そうと団結し、必死にパフォーマンスを上げていった歴史がTeam Kの「創世記」だったわけだ。

 K1はA1との比較で語られ続けた。この間Team Aは、オリジナルのセットリストA2を舞台にかけた。そしてこの公演中、Team Aのメンバーに故障があると、Kのメンバーが代役に呼ばれた。

 いろんなステージに立つ機会が増えるってことで、考えようによっては、喜ぶべきコトなのだが、これもまた「2軍」っぽさを醸し出す原因だったろう。

 これは憶測なのだが、当時「Kチーム」のファン(「Kリーガー」と呼ばれたらしい)の中で次のような文言が使われたのではないかな。僕がその立場だったら絶対こう言った。

 「KはAの植民地なのか」。

 然り。当時KはAの植民地であった。

 さて、植民地が実力をつけてくれば、当然独立の機運が高まるのは洋の東西を問わない。
 オリジナルのセットリストであるK2はTeam Kによる「独立戦争」であり、その中でも「転がる石になれ」は、「独立宣言」であり、「Star spangled banner」なのである(でさあ、この場合の秋元康はトーマス・ジェファーソンであると同時にジョージ3世なんだよなあ。自分で泣かしといて、「なんて可哀相なんだ」とホンキで自分も泣くんだこの人は)。

 後から来たことによって必然的に負わざるを得ないハンディキャップを跳ね返し、意思を奮い立たせるための民族主義的象徴としてのアンセムが、当時のTeam Kには必要だったわけだ。

 「転がる石になれ」がTeam Kのアンセムになった理由は、というと、煎じ詰めるとこの歌詞に尽きる。すなわち

We're the Team K

 「我らこそが、(定冠詞つきの)Team Kであるぞ」という宣言。それだけである。

 その他の歌詞は、「Team Kかくあるべし」という、まあ秋元先生の説法だよね。いわく「自分のMINDで動け」「丸くなるな」等々。もーうっせーつーの。

 でもそれらは別に、Team Kである必要条件でも十分条件でもなく、むしろAKBという毛色の変わったアイドルグループ全体の努力目標であったりする。
 だからこの歌の魂というか、キモは、やっぱり「自分らはKである」と取り立てて述べること、そのことに尽きるのである。

 「我は我なり」。

 「2軍」でも「劣化コピー」でもなく、自分が自分であること自体がまず価値であるということ。
 Team Aを目標とするのではなく「より優れたTeam K」を目指すこと。それがTeam Kの使命であるということ。
 この歌は、天地創造神兼破壊神アキモトからの宣命であったのだ。

 かくして植民地Team Kには澎湃と自主独立のうねりが生まれたのであったちゃんちゃん。

 だからさあ、他のTeamがこれを歌うのって、Kのメンバー(とKリーガー)にはすっごくヤだろうってすぐわかるじゃん。なのに日本青年館ではTeam Aに歌わせ、あろうことかTeam Bにはセットリスト丸々渡しちゃったりするんだよ。

 わかってて歌わせるのが破壊神が破壊神たるゆえんだよねえ。
 できあがるとすぐに壊すんだよ、この神さまは。

 以下ちょっと余談。

 同様の理由で、ずっと遅れて産声をあげたTeam Bには最初のオリジナルセットリストに「初日」が用意されることになる。
 もっともこの曲は「あたしたちがBだ!」と声高には歌う曲ではなく、せいぜい「(AやKに)負けたくない」と言うことで「あたしたち」を際立たせる程度ではあったが。それが当時のBらしいっちゃらしかったね。

 一方、「常に先を行く者」であったTeam Aには、AがAであることを鼓舞するアンセム、「Team Aであること」を声高に歌う曲は必要なかった。
 何しろ宗主国なのだ。Aであることは、すなわちAKBであることなのだし、その中心には「AKBとは高橋みなみのことである」が鎮座ましましているのだから。

 しかし2010年7月、A6のフィナーレに、その名も「先を行く者」を意味する「Pioneer」という曲が登場する。
 「転がる石になれ」と同様、「我らこそが(定冠詞付きの)Team Aであるぞ」と宣言する曲。

 このブログでこの曲について語る時がいつになるのかわからないので、ここでちょっとだけ言うと、この歌はそのタイトルと裏腹に現Team Aが「先を行く者」ではなくなったことを象徴している。

 古参はとっくの昔に気がついているのだろうが、現Team Aのメンバーはわかっているのかしらん。