リオの革命 | Commentarii de AKB Ameba版

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Tag:恋、季(夏)

A2の8曲目。
 場所はリオデジャネイロ。季節はカーニバルが行われるころだから3月上旬くらい。
 夏のイメージで勝手に7月とか8月とか想像しちゃうけど、南半球だから季節は逆。
 
 リオのカーニバルをテーマにした歌と言えば、思い出されるのはこれ作詞は康珍化。

あなたをさがしてのばした指先が
踊りの渦にまかれてく 人ごみに押されて
リオの街はカーニバル 銀の紙吹雪
黒いヒトミの踊り子 汗を飛び散らせ
きらめく羽根飾り

 この「ミ・アモーレ」は、カーニバルの雑踏で恋人とはぐれてしまった女性が主人公。祭りの熱気に煽られ、誘惑され、刹那的な欲望に迷う姿を歌う。

 女性は「あなた」とはぐれて困惑している。でも同時に、心の奥底に潜む「別の女」がささやく。「今こそ恋のチャンス」と。

 恋心の奥深さと矛盾に満ちた複雑さ、カーニバルの熱気と華やかさと淫靡さ。1985年のレコード大賞に選ばれた名曲だ。康珍化の傑作。康は前年にはレコード大賞作詩賞も取っている(ちなみに秋元康は、どういうわけかレコード大賞には嫌われている。大賞はおろか、作詩賞もない。いちばん近づいたのは「川の流れのように」だったのだが、美空ひばりが死んでしまって、大賞を逃した。取れたのは作曲賞だった)。

 翻って、われらの「リオ」はどうだろう。

夏の嵐は/リオのカーニバル
あのリズム/体も揺れる
刻む打楽器/響くホイッスル
もう 誰も止められないわ

 うーん、なんだろう、字面からは全然華やかさも熱気も伝わってこない。

あなた どこにいるの?
見えなくなって/I need you!
置いて行かないで
一人 淋しすぎるわ/I want you!

 こっちの女の子も彼氏とはぐれてしまったのだが、ちょっと頼りない。

異国の街角
はぐれてしまった/迷子みたい

 いや「みたい」じゃなくて、あなた完全迷子ですから。

 で、すっかり心細いのかと思ったら、

右手を振り上げて/Hey! Hey! Hey!
心が叫んでる/Yoo! Yoo! Yoo!

 といきなり元気になっちゃった。
 さっきまで、消え入りそうな声でI love youってつぶやいてたのにさ。あれかな、何か飲まされちゃったかな。

抱いて 抱かれて/キスは火の酒
そのノリで/乱れるパーティー

 「ノリ」ってあんた、コンパじゃないんだから。
 
 この「抱いて抱かれて」というのは、そう、「ミ・アモーレ」にも出てくるフレーズですね。

 すっかりいい調子になっちゃった女の子は

踊れ 踊れ 道の上は/自由のパラダイス
踊れ 踊れ すべて忘れて/嫌なことは
汗で流そう/暑い夜の幻

 うん、やっぱ何か飲まされちゃってるね、この子。南米だけにアップ系の白いヤツかな。

 しゅんとしてた女の子が元気になっちゃったことが「革命」ってことなのかしら。

 康珍化は、80年代~90年代の歌謡曲ではバクハツ的な人気を誇った作詞家だった。われらが秋元御大とは3つ違い。どちらも20代の新進気鋭の作詞家で、たくさんの歌手に詞を提供していた。

 秋元康と康珍化がどんな関係であったのか、僕は知らない。でも当時は、人気、名声、売り上げ、どれを取っても康珍化が一歩上を行っていたように思える。

 本当かどうかは知らないが、こんなエピソードを聞いたことがある。
 二人は当時最強のアイドルであった小泉今日子に同時に詞を提供した。その結果、康珍化の詞が新シングルのA面に選ばれ、秋元はB面に甘んじた。康の詞を読んだ秋元は素直に負けを認めたという(ちなみにちなみに、小泉今日子自身はレコード大賞作詩賞を取っている。

 21世紀になって、康珍化の名前はあまり聞かなくなった。秋元が書いたこの詞は、ちょっと康珍化へのオマージュが感じられるんだけど、康珍化へは届いてないないかな。

 いや、歌としては大好きですけれども。ここまで言っておいて何ですけど。マジでマジで。
 じっくりしっとり聴かせる明菜の歌とは別種の歌ですから。

 あと康珍化が秋元康の別名だとかゆってる人いるけど、大嘘ですからね。「康」が被ってるだけだからね。