桜の花びらたち | Commentarii de AKB Ameba版

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 Tag: 卒業、季(春)
 A1もラス前。
 後にAKSレーベルから発売されることになるインディーズながらデビューシングル曲にして、現在に連なる「卒業=桜ソング」の第1段。シアターに通い詰めるファンの強い要望で、最初のシングルに選ばれたという。「会いにいけるアイドル」AKBと、「会いに来る」ファンたちのとても幸福な記憶のよすがである一曲。

 A1公演が始まったのは12月だから、当時としては卒業シーズンにはちょっとフライング気味だったか。もっともCDの売り出しが2月1日だから、マーケティング的にはちょうどいいタイミングだったかも。そのかわりK1では7月まで桜の歌が歌われ続けることになる。
 S1公演のセットリストもA1と共通だったから、主に秋から冬にかけて桜の歌が歌われた。

 A1、ステージ上には全メンバー。前列に5本のスタンドマイクと5人。上手から星野、前田、高橋、成田、中西。後列にもスタンドマイクが5本あって真ん中の3本は、小島、板野、大島が占有。両外側の2本は共有で使っている。

 白い縁取がされた紺の短い丈のジャケット、左胸に金のクレスト、Lion rampant、おそらくありもののワッペン。K1でも同じ衣装を着ていたが、S1ではデザインは似ているが生地は黒(ないしは濃紺)。前身頃の裾が大きく開いて下のセーラー服が見えており、大人っぽい印象が強い。左胸のクレストにはSKEの文字が見てとれるので、特注品。前より衣装にお金をかけられるようになったんだね。

 それにしても、最初の公演で「卒業」の歌を唄わせ、ファンの強い要望があったとしてもあえてそれをデビューシングルに選ぶということに、多少の違和感を覚えた向きもあったのではないかな。最初っから卒業ってどういうこと、みたいな。

桜の花びらたちが咲く頃/どこかで希望の鐘が鳴り響く
私たちに明日の自由と/勇気をくれるわ
桜の花びらたちが咲く頃/どこかで誰かがきっと祈っている
新しい世界のドアを/自分のその手で開くこと

 桜の「花」が咲く頃ではなく、「花びらたち」が咲く頃、という歌詞。
 「花びら」が咲くというのは、表現としてちょっと不自然な上に、さらにそれに複数の「たち」までついているのにはやはり何らかの意味があるんだろうね。

 「花」と呼べるほどのものをまだ持っていない小さな「花びらたち」が象徴するのは、やはり初期のメンバーたちなんだろう。
 ついこの間までは普通の女の子だった。人前で歌ったり踊ったりするのなんか、夢のまた夢だった子たち。この子たちが、他の子たちと違ったのは、ただ自分の手で夢のドアを開けようとする意思があったということだけ。

 彼女たちが歌い上げるのは、デビューしたてなのに、卒業の歌。
 まるで「ここに留まってはいけないんだよ」とあらかじめ予告されているかのように。

 その花びらたちが、今、大輪の花を咲かせている。

ps. 2022-05-22
 デビューシングルが「卒業」の歌ということに関し、シアターでも「妙な空気」が流れたことがあったらしい。