それは、今から七年前のことです。


ある土曜日、知り合いの人のお店を訪ねた時のことでした。


その人は、控えめな感じの方で、どちらかというと地味な印象を受けました。


だからその方のされてることも、その印象から大きく外れてはいないだろうと思っていました。


ところが、びっくりです。その人が実際に作っておられるものは非常に地味な物なのですが、それを一つの作品としてまとめた形が、とても前衛的でした。


ウワー! すごいと歓声を上げてしまいました。


最初にそれほど期待していなかっただけにそのギャップは大きかったと思います。


あのドット模様で世界的に有名になった前衛アーチスト・・・を思わせるような、ものすごくミニマルなもので大作を造ってしまうような・・・そういう作品でした。


その頃の私というと、常に周りから責められているように感じられて、苦しんでいた時期です。


そんな私の目の前に、その方は派手ではあるがセンスの良い着こなしで現れ、前衛的な作品を見せて下さいました。そのうちにおかしな気分になってきたのです。


多分帰りの車の中だったと思うのですが (そうでないと座り込んでしまう)、幻覚のようなものが見えてきたのです。


突然私は、高い空の上に持ち上げられてしまったのです。


それもとても静かな空の上で、ちょうど飛行機で7000メートルくらいを飛んでるような感じ。


その心地よい空の上から、下を見ると、小さな私が、雨のような、吹雪いているような中を苦しげに歩いている、惨めな姿が見えたのです。


その途端、私には解ったのだと思います。


私の苦しみは、取るに足らないもの、現実でさえないものかもしれないと・・・。


その直後、大きな幸福感に満たされたのです。


本当に、心も体も全て、深い癒しの中にいました。


これを至福というんでしょうか。


これ以上の幸せはないと思いました。


                  つづく