独り静かに甘い思いに浸ろうと 過ぎた昔の記憶を懐古するが


求めて叶わなかったことの多さに溜息をつき


貴重な時を無駄に過ごしたと 古い嘆きを蒸しかえす


滅多に泣くことはないのに 気づけば瞳は涙に溢れ流れおちる 


果てない死の暗闇に隠された 親愛なる友人への思いに


とうに死に絶えたはずの愛の悲しみが息を吹きかえし


消えていった幾多の面影を偲ぶ


こうして過ぎ去った嘆きを嘆きかえし


苦しみの数をひとつひとつ数えなおそうと


呻き尽くしたはずの思いを目の前にならべるのは


支払い済みの勘定に また支払いをするようなものだ
 

でも そんな時でも 私の友よ 君を思えば
 

失ったものはすべて取りもどされ 悲しみの痕跡も消え去るだろう
 

                                 <甘美な記憶> ウィリアム・シェイクスピア